私たちはパラダイスを愛している 壊滅した町、トレーラーハウスからの再建を諦めない人たち

2022年1月10日 06時00分
<連載「ワン・プラネット 深まる気候危機」>
「あの家は、新しく建てているところだよ」
 米西部カリフォルニア州パラダイスで、チャールズ・ブルックス(41)は建設中の家々を指さした。

カリフォルニア州パラダイスで、町の再建を目指すチャールズ・ブルックスさん(左)とジェン・グッドリンさん。ジェンさんはトレーラーハウス(左奥)で暮らす

 2018年11月、人口約2万7000人(当時)の町は、山林火災「キャンプ火災」に襲われた。ブルックスが火事に気づいたのは午前8時半ごろ。晴れていた空が急に夜のように暗くなり、子どもたちが「煙の臭いがする」と騒ぎだし、慌てて車に乗り込んだ。避難路は、煙と炎に包まれた地獄のような道のりだった。
 火災は町の90%以上の建物を焼き、85人が死亡。町がなくなるなんて、これからどうすればー。

◆「また子どもたちにサッカーを」

 「再建するぞ」。避難先の借家で、焼け出された友人が口にした。ブルックスも、車に積んだままだった子どもたちのサッカー用具を見て「また土曜日には子どもにサッカーを教えるんだ」と奮い立った。がれき撤去で汗を流す一方、町に戻る住民を支援するため助成金や許認可などの情報を提供する「パラダイス再建財団」も発足させた。

◆「より良い環境にしたい」

 財団トップは、パラダイス生まれのジェン・グッドリン(39)が務める。力になりたいと、1年半前にコロラド州から生まれ故郷に戻ってきた。今は夫と子ども4人の計6人で、自宅の建設予定地に止めたトレーラーハウスで寝起きする。「私の世代では、かつての町の姿は取り戻せないでしょう。でも、再び火事に見舞われないよう、より良い環境にしたい」
 火災から3年たった今でも、町に戻った住民は7000人ほど。町は、住民の意見を採り入れながら140ページにわたる再建プランを作成。避難路の確保や水路の改修、緊急通報システムの整備など山林火災に強い町づくりを掲げる。

◆再建や仮住まいに重なる難題…「それでも」

 一方、町は住宅の新築にあたり、建築許可の要件に耐火性能を高める計画書の提出を義務付けており、再建ペースの遅さも指摘される。火災で焼失した約1万4000軒のうち、再建できた住宅は3年間で1000軒ほどにとどまる。
 町外に避難せず、トレーラーハウスなどで仮住まいする住民は約300人いるが、町の特別な許可が必要。町はルール違反の仮住まいが散見されるなどとして許可の条件を徐々に厳しくしており、住民から不満の声も漏れる。
 それだけではない。保険金は十分に支払われず、建設ラッシュに伴って人件費や資材価格が高騰。住民が抱えるトラウマ(心的外傷)のケアも求められる。

カリフォルニア州パラダイスで、町の再建への課題を語るスティーブ・カルトンさん

 ただ、元町長のスティーブ・カルトン(75)は諦めない。「それでも、私たちは今の状況から前に進もうとしているんだ」(敬称略、カリフォルニア州パラダイスで、吉田通夫)
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 地球規模の気候変動は、生態系や人々の生活を一変させ、民主主義をも脅かしています。本紙は今後も随時「ワン・プラネット」を掲載する予定です。

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