詩作と人生~日和聡子の詩の風景
2022年1月9日 18時00分
本書はそれぞれの人物ごとに数編の詩で構成され、一種の評伝的な側面もあると言えるが、巻末に多くの参考文献が記されているように、各人の作品や先行研究等を通じて著者が感受し着想したものを、詩のかたちで新たに表し語り直そうと試みたものとも思える。
集中の一編から採られた書名は、本書全体を貫き象徴するものでもある。身体や物事の中軸、精神的支柱としてのバックボーン、すなわち「背骨」を感じさせる気骨ある女性たちを柱に、「骨」を含む心身と生命のありようが、重要なテーマ、モチーフとしてさまざまなかたちで繰り返し描かれる。主題に絡めて作者自身の詩作や人生観にまつわる意識や心情が反映されていると思われる作品により魅力を感じた。〈ハンマーをひとふり/こんどはなにが現れるのか/触れるかけらには/どんな物語が隠れているのか〉(「泥水が沁みてゆく真っ白な紙」)
この言葉を思い返しつつ、新しい年もさまざまな詩や詩人たちとの出会いを楽しみにしたい。(ひわ・さとこ=詩人)
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東京新聞文化面では月に1回、詩人日和聡子さんによる詩の月評「日和聡子の詩の風景」を連載中です。新年の1回目をTOKYO Webで公開します。日和さんが案内してくれる豊かな言葉の世界を味わってみませんか。次回掲載予定の2月5日(一部地域は同6日)以降は紙面でお楽しみください。
※掲載は、原則毎月第1土曜の夕刊文化面(一部地域は翌日曜の朝刊文化面)
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