米軍の「特権」でほころんだ水際対策…「まん延防止」適用の原因に? それでも岸田首相は「地位協定改定考えていない」

2022年1月8日 06時00分
 「最悪を想定」した新型コロナウイルス対応を掲げ、昨年10月に発足した岸田政権が7日、初のまん延防止等重点措置の適用に踏み切った。岸田文雄首相はオミクロン株の日本流入時、外国人の新規入国の全面的な停止を行い、先手を打った厳しい水際対策を講じたと公言。だが、在日米軍基地の水際に生じた「ほころび」には及び腰な政府の姿勢が目立ち、周辺地域への感染拡大につながった。就任から100日間を待たず、首相は正念場を迎えている。(山口哲人)

◆基地の自由な出入りであいた「大穴」

 「水際対策は、米軍基地の自由な出入りで大穴があいていた」
 政府が沖縄など3県への重点措置適用を報告した7日の衆院議院運営委員会。沖縄県が地元の赤嶺政賢氏(共産)は、在日米軍が日米地位協定などに基づき、入国する軍関係者らに独自の検疫を行っていることを静観してきた日本政府の姿勢を批判した。
 この日、新規感染者数が過去最多を更新する1414人に達した沖縄県で、米海兵隊のキャンプ・ハンセン(金武きん町など)内のクラスター(感染者集団)発生が発覚したのは昨年12月中旬。その後の日米間のやりとりで、緊急事態宣言が発令中だった9月初めから、米側が軍関係者の訪日時の出国時検査を免除したり、入国直後の行動制限期間中に規則が十分に守られていなかったりした実態が次々と明るみに出た。
 赤嶺氏は米軍関係者を特別扱いせず、他の外国人と同様に入国を禁じるよう求めたが、山際大志郎経済再生担当相は「日米同盟の抑止力という観点からも、そういう話とはちょっと違う」と拒否。日本政府が米側に対策の強化を要請したことをもって「問題はこれからなくなっていくと考えている」と幕引きを図った。

◆基地周辺の感染拡大と因果関係認めず

 重点措置の対象になった3県は、いずれも在日米軍基地が所在するなど結び付きの強い地域だ。当然、地元では「感染拡大の大きな起因の1つが米軍基地であることは間違いない」(玉城たまきデニー沖縄県知事)という認識が強い。
 しかし、政府は「コメントは控えたい」(松野博一官房長官)などと一貫して関連性を認めない。山際氏は7日の参院議運委で「因果関係だけ言っても、感染拡大防止につながらない」と米軍由来かを突き詰めることにも否定的だった。

◆米国への「負い目」で対応ためらう?

 背景には、日本の防衛を米国に頼ることに伴ういびつな同盟関係がある。中国の軍備拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発で、安全保障上の連携強化の重要性は増しているというのが日本側の考え。負い目のような意識が、コロナで踏み込んだ対応をためらわせているとの見方につながる。政府高官も「臆測で物は言えない」と認める。
 日本のコロナ対応が在日米軍に及ばない問題点は以前から指摘され、全国知事会は菅政権時代の2020年11月に日米地位協定の抜本的な見直しなどを提言したが、政府は取り合わなかった。岸田首相も6日、記者団に「改定は考えていない」と明言している。
 「『岸田は慎重すぎる』との批判は全て負う覚悟だ」。首相は外国人の入国禁止を表明した際、そうアピールした。今回はコロナ対応より対米姿勢の方が「慎重すぎる」ように見え、立憲民主党の泉健太代表は「国民の命よりも米軍の行動を最優先に考えているなら残念だ」と指摘した。

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