マイナンバーカードの普及進まないのに事業費膨張… 原因の相次ぐ契約変更の3タイプとは?

2022年1月9日 06時00分
 マイナンバーの運用が始まって丸6年。思うようにカードの普及が進まない一方で、巨額の公金を投じた関連事業で契約変更が相次ぎ、事業費が膨れ上がっていた。本紙の分析では、変更理由には主に3つのタイプが存在していた。(デジタル政策取材班)

◆政府の試行錯誤に振り回され

 地方公共団体情報システム機構は、国に代わって実務を担うため、国の政策見直しには対応する必要がある。機構の契約変更の多さは、国のマイナンバー事業が試行錯誤を重ねてきたことの裏返しでもある。
 その代表がマイナンバーカードの発行だ。国が機構に求めた当初の発行枚数は年間1000万枚だったが、その後、4000万枚に。2019年には23年3月末までにほぼ全国民がカードを持つとの計画に上積みされた。
 国が計画を見直すたびに、機構は製造枚数の変更をはじめ関連機器の増設やシステム増強を迫られた。カード普及の低迷を打破するためQRコード付きの交付申請書を配った際には、申請増を見込み業務体制を強化するなどした。結果、当初58億円だった契約額は、8回の変更を経て750億円に跳ね上がった。

◆発注「アバウト」 システム改修費80倍超も

 IT業界関係者が「ありえない」と指摘するのは、システム改修の多さだ。その数は契約変更のあった37件のうち4割。変更理由は、国の政策判断という外的要因だけではない。
 カード交付システムの設計開発では、発注後に自治体からの要望などから改修が必要となり、契約額は、6回の変更を経て80倍超の17億円にまで膨らんだ。機構は「発注前から市町村から改善の声があったが、要望が多岐にわたり取りまとめに時間を要するので、必要最低限な内容で契約した後、契約変更で実現する方式を採用した」とする。機構によると、29回変更のあった自治体のシステムをつなぐ「中間サーバー」運用をはじめ他の3つの事業でも、同様に発注前から変更を見込んだ契約だったという。
 ある総務省幹部は「言い訳に聞こえるかもしれないが、神様みたいな人が一発でばしっと決められればいいが現実は難しい。走らせてみて意見が出てくる」と話す。これに対し、国のデジタル政策に携わる政府の幹部は「機構に限らず霞が関はこういうシステムを作りたいという要件定義がアバウト。それが常態化しているから後で契約変更すればいいと思い込んでいる」と発注側の能力不足を指摘する。

◆配達遅れや問い合わせ殺到…機構の想定外れ

 機構の想定が外れたケースもあった。マイナンバーの番号を知らせる通知カードの発送が始まった15年秋、各地でカードの配達が遅れた。各戸に配布した書面の宛名の文字が小さかったことがトラブルに拍車を掛けた。カード作成を発注したのが機構だった。文字を大きくするなどの対策を講じたことで、11億円の追加負担が生じた。
 マイナンバーカードの利用者向けコールセンターや自治体向けサポート業務では、想定以上の問い合わせがあり、スタッフ増員や窓口時間の延長を余儀なくされた。機構は「後発的に生じる事象を全て見込んで当初契約に反映させることは困難なので、問い合わせ量に応じた対応をその都度行っている」と主張する。

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