「障害者でも政治参加、当たり前に」国会バリアフリーの現状 車いす議員3人に聞く

2022年1月11日 06時00分
 車いすで活動する立憲民主党衆院議員の大河原雅子さん(68)、れいわ新選組参院議員の木村英子さん(56)、舩後靖彦さん(64)に国会のバリアフリーの現状や、障害がありながら政治に携わる意義を聞いた。(聞き手・木谷孝洋)

◆立民・大河原雅子さん「質疑や採決のデジタル化も」

車いすを使用するようになって感じたことを話す大河原雅子衆院議員=東京・永田町の衆院第一議員会館

 ―車いすを使うようになった経緯は。
 「昨年3月下旬に自宅前で突然倒れた。自覚症状は全くなかったが、脳出血だった。9月に退院し、今も左の手足は自由に動かないが、話したり文字を書いたりはできる」
 ―退院直後の衆院選に立候補した。
 「私は都議会と衆参両院で長く議員を続けてきたが、地域で暮らす人の感覚、生活現場の声を政治に届けたいという思いでやってきた。中途障害の当事者になっても選挙に挑戦できるということを示したかった。これからは障害がある方が当たり前に選挙に出られる環境をつくっていくことが私の仕事だ」
 ―車いすで国会活動する中で気付いたことは。
 「やはり移動が大変だった。議員会館の事務所から本会議場に行くために、何度もエレベーターに乗らないといけないし、道順を覚えるのも一苦労だった。本会議場でも記名投票をする際は、閣僚席の後ろを回って演壇まで行かないといけない。数分の会議のために委員会室に行かないといけない。民主主義は手間がかかるということを如実に体験している」
 ―国会のバリアフリー化への注文は。
 「今は本会議場の自席に座れないので、車いすでも作業できるよう対応してほしい。参院では本会議場に介助者が入れるようになっているが、当事者にとっては安心だ。これは運用なので衆院でも早期に実現できるのではないか。
 もうひとつはデジタル化だ。党の部会などはインターネットを通じて参加することが増えているが、国会も質疑や採決でデジタル化を進めるべきだ。障害者だけではなく、妊娠中の女性議員らにとっても意味がある」
 ―障害のある人が政治に参加することでどういう変化が生まれると思うか。
 「障害者への合理的配慮が間違った方向、排除の方向に向かわないようにしないといけない。差別されないことを保証するために、国会議員として行政をチェックすることには意味がある。行政が当事者の側に立った視点を獲得することがいかに重要かを伝えたい」
 ―国会では参院でバリアフリー化が進んでいる。
 「私は当事者なので、参院が進んでいると聞けば、やはり衆院も頑張らなきゃいけないと思う。れいわ新選組の木村英子議員や舩後靖彦議員と一緒にやれる部分もあるし、衆参で障害がある議員の活躍の場をぐっと広げられるかなと思っている。『窮すれば通ず』で、新しいアイデアや議員活動の新しいやり方を開発するチャンスでもあるので、がんばりたい」

 おおかわら・まさこ 1953年、横浜市生まれ。1993年、東京都議選に初当選。2007年から参院議員、17年から衆院議員を務める。現在、衆院2期目。

◆れいわ・木村英子さん「衆院の心のバリアー、変えたい」

れいわ新選組の木村英子参院議員=東京都千代田区で

 ―参院のバリアフリー化をどう評価しているか。
 「本会議場で演壇へのスロープが設置されたことは本当に良かったと思っている。重度障害者の議員として発言する際に演壇に立つことは重要なことだ。ただ、議場内のスペースが限られているためスロープの幅が電動車いすの幅ぎりぎりで、スロープに行くまでの動線もとても狭く、電動車いすを運転するのはとても神経を使う」
 ―参院では、2019年の選挙後にバリアフリー化に向けて動きだした。
 「私と舩後氏が当選したとき、初めて重度障害者が国会議員になるということで国会のバリアフリー化が注目された。参院の議院運営委員会や事務局が私たちに配慮してくれて、どのように改装したらいいのかを一緒に考えてくれた。自分たちで声を上げなければ何も変わらないのかなと思っていたので、議運や事務局が積極的に動いてくれたことはすごく印象的だった。それに比べて衆院の方はそうした態勢になっておらず、ずいぶん扱いが違うと思う。心のバリアーを感じる」
 ―国会でバリアフリーを進める意義は。
 「国会議員には高齢の人も多い。体調が悪くなって車いすが必要になったり、つえが必要になったりもする。そういう議員に対する合理的配慮を整えていかないといけない。障害者だけではなく、LGBTの人などさまざまな配慮が必要な人への対応も含めて、国会が変わらないと社会の意識も変わらないと思う。私たちが当選し、参院でバリアフリー化が進んだことで、世間にも『国会から変わっていくんだ』というイメージが広がった。衆院も変わらなければ、参院から始まった国会のバリアフリー化や差別解消に向けた流れが止まってしまうのではないかと危惧している」
 ―バリアフリーを進める際の留意点は。
 「障害があると、誰かの迷惑にならないようにしようという意識を持ちがちだ。中途障害の場合には、動けなくなっていく自分を受け入れるのにも時間がかかる人もいる。設備を改善してくださいと当事者が1人で声を上げるのは勇気がいることだ。周囲の人がちゃんと配慮することが、本人にとっても言いやすい環境につながる。これから大河原さんと情報交換しながら衆院のバリアフリー化を求めていきたい」

 きむら・えいこ 1965年、横浜市生まれ。生後8カ月のとき、転落事故で重い障害が残った。障害者の自立支援に取り組み、2019年参院選で初当選。

◆れいわ・舩後靖彦さん「多様性のある国会に」

れいわ新選組の舩後靖彦参院議員=東京・永田町の参院議員会館で

 ―2019年参院選以降の参院におけるバリアフリー化をどう評価しているか。
 「国会内では、本会議場・分館におけるバリアフリートイレの新設・改修、段差解消のスロープ・階段昇降機の設置、エレベーターの新設や大型化などさまざまなバリアフリー化が進んだ。2020年1月には参院本会議場にスロープが設置され、3月26日の当初予算案の採決にあたり、憲政史上初の本会議場のスロープを使った記名投票が行われた。多くの議員から拍手を送られ、感無量だった。常時車いすを利用する私にとって活動しやすい環境整備が進められている。
 ハード面だけではない。私が所属する文教科学委員会では、声を出せない私のために音声読み上げ機能のついたパソコンやモニターの持ち込み、秘書らによる質問の代読、再質問の際に文字盤で質問を作成する間は速記を止めて質問時間に含めない、介助者の同行―といった合理的配慮をいただいている。
 こうしたバリアフリー化は、私のためだけのものではない。例えば、本会議場にはスロープや手すりが設置されているが、こうすることでけがをした人や体調が悪い人でも不安なく登壇できるようになる。あとに続く障害のある議員にも有用であることを確信している。
 バリアフリー化を契機として、さまざまな当事者が働きやすい国会につなげることにより、多様性のある国会、多様性のある社会につながると考えている」
 ―今後、参院においてさらなるバリアフリー化を進めるために何が必要か。
 「一番必要なことは、利用する当事者が設計段階から参画し、当事者にとって使いやすいものになっているかチェックしながら進めることだ。本会議場の仮設スロープができた段階で、私と木村英子議員が実際に試してみたが、議席の列との関係で大型車いすが通れるぎりぎりの幅しかなかった。また、勾配がきつく、車いすを押す介助者への負担が重いと感じた。幅は議席を取り外さなければ広げられないため、そのままとなり、勾配は修正してもらうことができた。
 スロープにじゅうたんを敷くので、サンプルを試したが、最初は車いすの幅に足りず、片輪しか乗らなかった。再度、より大きなサイズのものを持ってきてもらって試した。車いすにとって、じゅうたんは走行の障害にしかならない。傾斜がある場合は、より介助者に負担がかかる。権威ある場にふさわしく高級なじゅうたんを敷かれるのだが、車いす利用者にとって結構なバリアーになっていることを申し上げたい。
 参院の建物のバリアフリー化は主に車いす利用者を想定して工事されている。国会にはさまざまな障害がある人が来る。議員会館や国会議事堂は、改正バリアフリー法に適合した模範的な建物であってほしい」
 ―衆院でも車いすの議員が当選した。衆参両院でバリアフリー化を進める必要性をどう考えるか。
 「本来であれば、参院でバリアフリー化を実施した際に衆院も同時にバリアフリー化をすべきだったと思う。残念ながらそうはならず、3人の車いす議員がいる参院が大きく先行する形になった。私は昨年1月、別の取材に『次期衆院選で重度障害者が当選したら、慌ててバリアフリー化することになる。参院を見習うことを希望する』と答えたが、まさにそうなった。
 バリアフリー化で重要なのは、実際に利用する当事者の意見が反映されることだ。衆院でバリアフリー化を進める上では、ぜひ大河原さんの意見が計画段階から反映されることを願う。障害がある人が実際に使用することを想定して工事を進め、試作・仮設段階では実際に試乗できるなどの機会も設けてもらいたい。
 2年間、参院で活動してきた私も、そうした機会をもらえるなら積極的に参加するなど、できる協力は惜しまずにしていきたい」(書面で回答)

 ふなご・やすひこ 1957年、岐阜市生まれ。商社に勤めていた42歳のころに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断される。2014年千葉県松戸市議選で落選。19年参院選で初当選。

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