<武蔵野新聞>地元産ホップ 至福の一杯 都市型農業で地ビール造り

2022年1月11日 06時31分

地元産ホップを使ったビール造りについて語る平槙駿一さん=いずれも武蔵野市で

 新宿まで電車で二十分前後と都心から程近い武蔵野市。JR中央線と京王井の頭線が乗り入れる吉祥寺駅周辺は、住みたい街ランキングで常に上位に登場する人気の街だ。実は都市型農業が盛んな一面もあり、地元農家やビール醸造家らが、地域で育てたホップを使い、クラフトビール(地ビール)造りに取り組んでいる。

収穫期を迎えたホップを確認するプロジェクトの関係者ら=いずれも武蔵野市観光機構提供

 「クラフトビールになじみのない人も飲みやすいように上品な味に仕上げました」。仕掛け人の一人で、醸造を担当する「26Kブルワリー」(境南町)の平槙(ひらまき)駿一さんは、自信を込めてそう語った。
 きっかけは二〇二〇年四月に始まった「東京でホップを育てよう!」プロジェクト。各地でクラフトビールが誕生する中、地元産のホップを使ったこだわりのビールを造り、地域振興につなげようと、市観光機構などが企画した。

毬花を付けたホップ

 地元農家もホップ栽培の経験はなく、山梨県の農家で栽培方法を学んだ。清水農園(吉祥寺東町)で栽培をスタート。二年目には栽培地を大坂農園(関前)とJR武蔵境駅のテラスの三カ所に拡大し、計約九十株を植えた。
 人通りが多い駅のテラスでは農薬を使わず、半年間ほぼ毎日、手作業で害虫を駆除する苦労もあったが、秋には計約二十キロを収穫。このホップを使ったクラフトビールは、それぞれの場所にちなみ「吉祥寺エール」「関前エール」「武蔵境エール」と名付けた。地元のイベントでほぼ完売する好評を博した。
 ホップはビールの苦味や香りを生み出す原料で、泡立ちを良くし、雑菌の繁殖を抑える役割も果たす。いずれも松かさ状の「毬花(きゅうか)」に含まれる黄色い粒状の樹脂「ルプリン」の効果だ。製品化された乾燥ホップはルプリンの量が一定だが、生ホップの場合は加減が難しく、作り手の腕の見せどころ。三種類のビールの中で、一番大ぶりのホップを使った関前エールが苦味も香りも強めに仕上がった。
 新型コロナ禍の影響で、予定していた一般向けの苗植えや収穫体験は縮小を余儀なくされた。それでも平槙さんは「小学生が自由研究の題材にしたり、毎日写真を撮りに来るお年寄りがいたりと、関心の高さを感じた」と振り返り、ホップの栽培が市民の交流の場になることを期待する。

地元産ホップを使った3種類のクラフトビール  =26Kブルワリー提供

 クラフトビールはプロジェクトの第一弾で、他にホップ入りのソーセージやパンも開発した。市観光機構事務局長の高橋勉さんは「市外から訪れた人も地元の人も皆が楽しめる商品を作り続けたい」と話す。

◆武蔵野市

 人口約14万8000人(今年1月現在)。東京23区と多摩地域のちょうど境目に位置する。1995年に運行を開始したコミュニティーバス「ムーバス」は、地域住民に寄り添う交通手段として注目され、コミュニティーバスが全国に広がるきっかけになった。
 ◇
★市民文化会館小ホールのパイプオルガン=写真、公益財団法人武蔵野文化事業団提供=は1984年、都内の公立ホールで初めて設置された。高さ約9メートル。計2780本のパイプをつなげると長さは約1.5キロにもなる。4年に一度、アジア唯一の国際オルガンコンクールを開催。コロナ禍で延期された第9回は2023年の開催を目指す。
★武蔵境駅近くの「境南浴場」=写真=は市内唯一の営業中の銭湯。3代目店主・毛利友昭さん(56)の父俊夫さんのアイデアで約30年前に設置したサウナが、近年のサウナブームで人気に。浴室の鋭い目つきの鳳凰(ほうおう)は、客が湯あたりしないように目を光らせているのかも。

◆編集後記

 記者は隣の杉並区出身。武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭恩賜公園には思い出がたくさん。勝手ながら“地元”の領域に入れている。武蔵野市は吉祥寺をはじめ、ファッションのイメージが強かったが、今回の取材で農の魅力を感じた。新型コロナの影響で「新しい生活様式」が生まれ、都市部の農地への関心が高まっているという。都内での地産地消の在り方に注目したい。
明日は谷中(台東区)に行きます!
文と写真・佐々木香理
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