米軍基地周辺のコロナ感染拡大…「国の安保のために住民の安全が損なわれてはならない」 沖縄国際大・野添准教授インタビュー

2022年1月12日 06時00分

沖縄国際大の野添文彬准教授(本人提供)

 在日米軍基地での新型コロナウイルス感染者の急増と、基地周辺自治体での感染拡大との因果関係を、政府・与党がようやく認めた。米側の「特権」を定めた日米地位協定などに阻まれ、日本側によるチェックが在日米軍内部まで及ばないという構図は、ヘリ墜落事故などが起きるたびに悪弊として取りざたされてきたが、改定はいっこうに進まない。沖縄国際大の野添文彬准教授(国際政治学)に、地位協定の問題点や打開策を聞いた。(聞き手・村上一樹)
 ー新型コロナを契機に、日米地位協定の課題が改めて浮き彫りになった。
 「検疫に関する地位協定の最大の問題は、米軍人・軍属、家族の日本入国について(日本の法令適用からの除外などを)定めた第9条に、保健衛生関連で明文化された条文が一切ないことだ。1996年の日米合同委員会で、米軍の検疫手続きの適用を受けることと合意したが『ザル』になることは恐らく想定していなかった」
 ーなぜか。
 「地位協定を締結した60年は米国が先進国で、日本はまだ高度成長期だったからだ。状況が変わってきた今、協定もそのままというのは問題がある」
 ー沖縄県内では過去にも協定が壁となって、米軍へのチェックが阻まれた。
 「2004年に沖縄国際大に米軍ヘリが墜落した際は、米兵が勝手に現場周辺を封鎖して県警は締め出され、外務政務官も中に入れなかった。17年に沖縄県東村ひがしそん高江の民有地に米軍ヘリが不時着、炎上した際も、米軍が現場から機体とともに大量の土を持ち帰り、日本側は本格的な検証ができなかった。最近では、基地内で発生した有害性の指摘される汚水が基地外に流出しているのに、周辺自治体は立ち入り調査できないという、生活に直結する問題も起きている」
 ー構造的な問題か。
 「日本政府には米国に守ってもらっているため、物を言いにくいという気持ちがあるのではないか。米国は日本以外にもさまざまな国と地位協定を結んでいるので、1カ国だけ協定を見直すのは難しいと考えている面もあるだろう」
 ー岸田文雄首相も協定改定には否定的だ。
 「政府の人は『協定は安全保障上、大事だ』と言うが、国の安保のために住民の生活の安全が損なわれてはならない。在日米軍基地が沖縄に集中しているので、地位協定関連の問題も沖縄中心に表れてくるが、協定はそもそも日米両政府が結んだもの。本来は日本全体の問題なのに、沖縄だけの問題だという扱いをされてきたことがおかしい」
 ー課題の解決へ大切なことは。
 「米軍が駐留していても、平時は国内法が適用される国もある。岸田首相は協定改定は否定するが運用を改善すると言っているので、国内法の適用を求めていくべきだ。中国の台頭を受け米国が日本を必要としている今、日本の発言力は相対的に高まっている。国の安保は住民の支持がなければ成り立たないということを、首相レベルなどで申し入れていくことが必要だ」

 のぞえ・ふみあき 1984年、滋賀県生まれ。一橋大大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。沖縄国際大法学部地域行政学科准教授。専門は日本外交史、国際政治学。主な著書に「沖縄米軍基地全史」「沖縄返還後の日米安保」、共著に「沖縄と海兵隊」など。

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