大洗の実験施設の機能拡充へ 原子力機構、日米で高速炉開発推進

2022年1月12日 07時43分

日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」=大洗町で、本社ヘリ「おおづる」から

 原発以外の原子力施設では、今年に入り、日本原子力研究開発機構の大洗研究所(大洗町)にある高速炉研究の実験施設「アテナ」の機能を大幅に拡充し、日米共同の高速炉開発に活用する計画が明らかになった。原子力機構は既に工事を開始。併せて、大洗研の高速実験炉「常陽」の運転再開も急ぐ。
 原子力機構によると、計画には三菱重工業も参加。米原子力企業テラパワーが、冷却材にナトリウムを使う高速炉を米ワイオミング州に建設する。二〇二四年に着工し、二八年の完成を目指す。アテナではナトリウムの挙動などに関する研究を担う。
 日本の高速炉開発を巡っては、運転しながら消費した以上の核燃料を得られる高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が一六年に決定。これを受け、もんじゅの前段階の実験炉常陽が高速炉開発の中核施設として再浮上した経緯がある。常陽は現在、原子力規制委員会の審査中。二二年度中としていた運転再開時期は、昨年、二四年度以降に延期された。
 政府は当初、フランスの高速炉「アストリッド」計画への協力に活路を見いだそうとしたが、その後、仏政府が計画を凍結。常陽やもんじゅの知見を生かして高速炉開発の延命を図る日本と、長く遠ざかっていた高速炉開発を再開したい米国が利害の一致を見た。
 原子力機構の核燃料サイクル工学研究所(東海村)では、廃止措置中の東海再処理施設で、高レベル放射性廃液を「ガラス固化体」にする作業が昨年十月から中断している。溶かしたガラスを廃液と混ぜるガラス溶融炉の詰まりが想定より早く発生したため。二八年度までに全ての廃液を処理する計画は、遅れる可能性も出ている。
 高レベル廃液は極めて放射能が高く、規制委は漏えいや蒸発のリスク低減の観点から、廃止措置の中でガラス固化を最優先で進めるよう求めている。溶融炉の運転再開は二二年度以降になる見通しだ。
 大洗研にある高温ガス炉の実験炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」は昨年七月、十年半ぶりに運転再開。一月下旬に、安全性を実証する国際共同研究に向けた試験運転が始まる。
 高温ガス炉は、炉心の冷却材にヘリウムガスを用いて高温の熱を取り出し、ガスタービン発電と水素製造などに幅広く活用する構想。政府が掲げる「二〇五〇年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」に資する新型原子炉として、研究開発にアクセルがかかっている。三〇年代以降に民間による開発への移行を目指す。
 原子力機構の児玉敏雄理事長は、十一日の茨城原子力協議会のパーティーで、これらの取り組みについて「安全性最優先で着実に進めていく」と述べた。
 量子科学技術研究開発機構の那珂研究所(那珂市)では、核融合の新たな大型実験装置「JT−60SA」で二月以降、水素同士の核融合に必要な超高温の「プラズマ」を発生させる実験を始める。昨年三月に予定していたが、設備のトラブルで延期している。
 量研機構は、並行して進められる国際熱核融合実験炉(ITER、フランス)計画のスケジュールには影響しないとしている。(長崎高大、宮尾幹成)

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