<デスクの眼>電力難続く北朝鮮 人口7割近く電気使えず 家庭では太陽光発電を取り入れるが…

2022年1月12日 18時00分
 北朝鮮の金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記は昨年末に開いた党中央委員会総会で、「電力工業部門は当面の電力需要を円満に保障し、生産を高い水準に引き上げるべきだ」と述べ、電力増産を指示した。2016年の党大会でも「国の切迫した電気問題を解決」するよう訴えており、電力難をいまだ克服できていないことを示した。
 韓国の国家統計庁によると、北朝鮮の電力生産量は20年基準で239億キロワット。韓国の約4%にすぎない。北朝鮮は昨年7月には国連に対し、国内で電気を使う人口は全体の3割強と報告。人口の7割近くが電気を使えずに暮らしていることになり、電力不足のしわ寄せをまともに受けているのが、住民たちであることは明らかである。
 社会主義を標榜ひょうぼう/rt>する北朝鮮で、電気や水道などの生活インフラは、ただ同然の価格で国家が供給するのが建前だ。しかし、停電が頻発する状況で、十数年前からは家庭ごとに一定の電気利用枠が割り当てられ、制限量を超えると、電気が自動的に遮断されたり、料金が高くなったりする仕組みが各地で広がった。電力の浪費を抑制する狙いといわれる。

2017年8月に作成された、節電を呼びかける北朝鮮の内部文書

 数年前、北東部・両江道リャンガンドの宣伝機関が17年8月に作成した「みんなで節電闘争を繰り広げ、国の切迫した電力問題の解決に積極的に貢献しよう」と題する内部文書を入手した。文書には、電気炊飯器や電気鉄板プレートなど、消費電力が大きい家電製品の使用を住民に禁じる内容が列挙されている。
 北朝鮮の宣伝サイト「朝鮮の今日」が昨年12月下旬、電力難改善の策として伝えたニュースには、あきれるしかなかった。名門・金日成キムイルソン総合大学で生産されているという「系統並列型逆変換器」なる装置を紹介する内容だった。
 同サイトによると、この装置を使えば、家庭や各種施設などに設置した太陽光パネルで生産した電力のうち、余剰分を国家電力網に送電することができる、ということだった。この装置の優れた点は「電力消費者が生産者となり、国の電力生産に資するところ」だと強調していた。

屋上に太陽光パネルを設置した北朝鮮の住宅=北朝鮮の画報「朝鮮」2021年12月号から

 北朝鮮各地の家庭では近年、中国から仕入れた太陽光パネルの設置による発電が普及している。国や地方の政府が電力を十分に供給できないがゆえに、住民が自力で電力を確保しようとした結果である。そのようにして個人が手に入れた電力を、電力難に無策の国家が、吸い上げようというのだ。
 北朝鮮の電力事情が悪いのは、エネルギー不足が最大の原因である。核・ミサイル開発に突き進んだことで、経済制裁が相次いで発動され、エネルギー不足に拍車をかけた。
 だが、北朝鮮は新年早々2度にわたり、国連安全保障理事会が禁じる、弾道ミサイルの発射を強行した。正恩氏の軍備増強への熱意は相変わらずだ。北朝鮮の人々が電力の恩恵を享受できる日は一体、いつになるのだろう。 (城内康伸)

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