ハンセン病 首相「おわび」 家族補償、法整備へ

2019年7月13日 02時00分

首相談話を受け、笑顔で握手を交わすハンセン病家族訴訟原告団長の林力さん(右端)ら。奥右は弁護団の徳田靖之共同代表=12日午後、国会で

 政府は十二日、ハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決の控訴見送りを受け、安倍晋三首相の談話と政府声明を持ち回り閣議で決定した。首相談話では元患者や家族に謝罪し、訴訟に参加したかどうかを問わず「家族を対象とした新たな補償の措置を講ずる」と明記した。近く家族に面会し、直接謝罪する意向も示した。政府声明は判決の法律上の問題点を指摘した。原告側は首相談話を「被害を償うに足りる賠償の道筋が示された」と評価し、控訴しないことを発表。十二日が控訴期限だった判決が確定した。 (妹尾聡太)
 首相は談話で、家族が受けた苦痛と苦難に対し「政府として改めて深く反省し、心からおわび申し上げます」と謝罪し、原告団ら家族と直接会って気持ちを伝えるとも表明した。
 政府は家族への補償について、法整備による措置を念頭に調整する方針。しかし、対象家族の把握や認定のあり方、補償額をどうするかなど課題は多い。
 原告団の林力(ちから)原告団長(94)は国会内で記者会見し「長い隔離政策の中で培われた予断と偏見、無知的な状況を放置してきた国家の責任、そのことを改めて私たちは問いたい」と、差別をなくす活動に真剣に取り組むよう政府に求めた。
 首相談話では、かつてのハンセン病患者隔離政策のもとで「家族に対しても、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実」と認めた。計約三億七千六百万円の賠償を速やかに履行するとも書いた。
 根本匠厚生労働相は十二日、記者団に「家族の抱える問題の解決を図るため協議の場を設置する」と話し、原告側と補償のあり方に関して擦り合わせる方針を説明。原告弁護団の徳田靖之共同代表は「七月中にも始めたい」と求めた。
 首相談話で示した政治判断と異なり、政府声明は熊本地裁判決に「法律上の問題点がある」と主張した。
 具体的には、一九九六年のらい予防法廃止後も関係閣僚に偏見や差別を除去する義務があったとした点を受け入れず、同法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の不作為を違法としたことも認めなかった。賠償の請求権がなくなる時効(三年)の起算点についても判決の考え方に異を唱えた。
 六月二十八日の熊本地裁判決は、国のハンセン病患者隔離政策で家族も差別を受けながら、国が取り除く措置をとらなかったことを違法と判断。原告五百六十一人のうち五百四十一人への賠償を命じた。原告団は十二日、敗訴した二十人についても控訴しない方針を明らかにした。
 首相は九日、記者団に「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族のご苦労をこれ以上、長引かせるわけにはいかない。異例のことだが、控訴しないこととした」と表明していた。

◆首相談話と政府声明のポイント

▼政府として深く反省し、心からおわび申し上げる。
▼訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずる。
▼家族に対しても社会に極めて厳しい偏見、差別が存在した。
▼家族の皆さまと直接お会いして気持ちをお伝えしたい。
▼熊本地裁判決には国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点がある。

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