<社説>こども家庭庁 社会が支える理念こそ

2022年1月13日 07時59分
 子どもの育ちを支える政策の司令塔として、政府が「こども家庭庁」の二〇二三年度新設を目指している。十七日召集の通常国会に関連法案を提出するが、問題点が多く、徹底的な審議が必要だ。
 まず、指摘せねばならないのは組織の名称である。当初は「こども庁」だったが、直前に「こども家庭庁」に変更された。与党内から「子どもの育ちは家庭が基盤」として「家庭」を明記するよう求める意見が出たからだ。
 確かに、子育ての多くは家庭が担っているのが現状だが、そのあり方は多様で、家庭だけでは子育てが困難な場合もある。「家庭」を名称に加えることで、社会が子どもを支えるとの理念から後退した印象を与えるのではないか。
 「政府一丸で取り組む」といいながら、各府省がそれぞれ担当する所管の一元化は見送られた。
 子ども政策は現在、文部科学省が教育、厚生労働省が保育や虐待防止策など、内閣府が少子化対策などをそれぞれ所管している。
 政府は当初、これらの政策を新しい庁に一元化し、専任の大臣を置いて政策を強力に推進する態勢をつくりたい考えだった。
 しかし、文科省の幼稚園、厚労省の保育所=写真、埼玉県鴻巣市で=、内閣府の認定こども園の所管一元化は見送られ、厚労省と内閣府の部局が統合されるだけ。
 幼稚園教育と保育所での保育の共通化や、いじめ対応を含む省庁間の連携強化を図るというが、それらは新しい庁でなくても可能ではないのか。
 担当相に与える他府省への勧告権に強制力はなく、首相への意見具申権限も実効性は不透明だ。
 財源確保も手付かずだ。「社会全体での新たな負担の枠組みを検討する」というが、岸田政権が意欲的には見えない。子ども政策重視の姿勢を示すには、負担の在り方を含めた財源確保の全体像を早急に示す必要があるだろう。
 子ども政策に関する「縦割り行政の弊害」を打破するには問題点を一つひとつ解決していくことが必要だ。新庁設置ありきの姿勢では、子どもの育ちを社会が支えるという理念の実現には程遠い。

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