<社説>カザフのデモ 泥棒政治を正さねば

2022年1月14日 07時47分
 旧ソ連圏・中央アジアのカザフスタンで大規模な反政府デモが燃え上がった。トカエフ大統領は力で抑え込んだが、前政権の長期支配で極まった不公正への国民の不満が消えたわけではない。根本的な解決を図る必要がある。
 自動車燃料の急騰をきっかけに全土に広がったデモは一部地域で騒乱に発展した。死傷者は二千人を超え拘束者は約一万人に上る、と伝えられている。
 トカエフ氏は警告なしに発砲する許可を治安部隊に与える強硬手段に出るとともに、ロシア主導の集団安全保障条約機構に平和維持部隊の派遣を要請した。これにロシアは素早く対応した。
 本来、国外からの攻撃を想定した軍事支援のはずだ。派遣要請に当たりカザフ外務省が出した「国外で訓練されたテロリストの武力攻撃に直面している」との声明はいかにも苦しい説明である。
 旧ソ連圏を自分の勢力圏と見なすロシアにとって軍事介入は渡りに船で、カザフには大きな禍根を残すことになった。
 カザフは石油、天然ガス、ウランといった地下資源に恵まれている。ソ連末期から約三十年にわたり「国父」として君臨したナザルバエフ前大統領は開発独裁を進めて国を発展させた。
 ところが、資源がもたらす富はナザルバエフ一族らひと握りのエリートに集中し、一般国民には豊かさをもたらさなかった。
 英国のシンクタンク「チャタムハウス」は昨年末「英国のクレプトクラシー(泥棒政治)の問題」と題する報告書をまとめた。クレプトクラシーとは、少数の権力者が国富を食いものにして私腹を肥やすことを指す。
 報告書は旧ソ連圏の泥棒政治による巨額の汚いカネが英国に流れ込んでいるとし、一例としてナザルバエフ一族がロンドンに三億三千万ポンド(五百億余円)に上る不動産を所有していることを挙げた。
 一方、カザフ国民の平均賃金は円換算で七万円に満たない。加えてコロナ禍に伴う失業や物価高が庶民生活を襲う。
 トカエフ氏が社会にはびこる不公正や矛盾を正さないと、人々の不満が再び爆発するだろう。
 二〇一四年のウクライナ、二〇年のベラルーシと旧ソ連圏では市民の大規模な抗議行動が相次ぐ。カザフの出来事もプーチン・ロシア大統領には人ごとではない。

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