映画「仁義なき戦い」(一九七三年)の中に組のトップでありな…

2022年1月15日 06時59分
 映画「仁義なき戦い」(一九七三年)の中に組のトップでありながら立場の弱い親分が出てくる。金子信雄さん演じる山守組長である▼指導力も人気もないので実権を握る組幹部(松方弘樹さん)からこうすごまれる。「あんたはわしらが担いでる御輿(みこし)やないの。御輿が勝手に歩けるいうんなら歩いてみいや」▼元首相の訃報に適切な書き出しとは思えぬが続ける。海部俊樹さんが亡くなった。九十一歳。宇野さんが醜聞で退陣した後、党内から祭り上げられる形で首相になった▼「御輿は軽い方がいい」。リクルート事件などで政治不信が高まる中、海部さんの清廉な印象が買われたのだが、党内での力はなく、御輿を担ぐ当時の竹下派の言うがままになっていたのは事実である。政治生命を懸けた政治改革関連法案が廃案となっても、衆院解散さえ許されなかった。当時の首相番だった身は見ていてもどかしかった▼だが、山守親分と重ねるのは間違っている。勝手には歩けなかったが、政治不信をなんとかしたいという信念の人であったとは信じる。担がれながらも少しでも自分の目指す方向へともがいた方だろう。当時、高い支持率を得たが、国民は政治浄化に向けた、その人のひたむきさを感じ取っていたのかもしれない▼軽かろうが、御輿になれた。今の自民党に海部さんほどのクリーンさで御輿になれる人が何人いるか。

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