東京湾の海底にプラごみの山 1964年東京五輪頃から堆積 魚介類や人への影響懸念

2022年1月16日 06時00分

河口から3キロの荒川の河川敷には細かく砕けたプラスチックごみが目立つ=15日、東京都江戸川区で(小川慎一撮影)

 東京湾の海底に、1964年に東京五輪が開催されたころからプラスチックごみが細かく砕けた「マイクロプラスチック」が堆積し続けていることが、東京農工大の高田秀重教授(環境汚染化学)の調査で分かった。丈夫で加工しやすいプラスチックは、目に見えない大きさになっても残る。プラごみによる海の汚染は魚介類や人への影響が懸念されており、高田教授は「プラスチックの使用を最大限減らすべきだ」と訴える。(増井のぞみ)

 マイクロプラスチック 大きさが5ミリ以下の微小なプラスチック。ごみとして海に流れ込んだ包装容器などのプラスチック製品が紫外線や波の力で劣化し、細かく砕けたもの。洗顔料などに使われるマイクロビーズや、化学繊維のくずもある。環境中の有害な化学物質を吸着する性質があり、誤ってのみ込んだ鳥や魚、ウミガメなどへの影響が懸念されている。世界各地の魚介類、水道水、食塩などから検出され、人の便からも見つかっている。

 高田教授は2016年に荒川河口から12キロ南東、19年に同9キロ南の東京湾の海底(深さ約20メートル)に円柱形の器具を打ち込み、地層(直径11センチ、長さ約90センチ)を崩さずに抜き取り土を採取した。
 乾燥させて顕微鏡で分析し、1960年代半ば以降の地層で1グラム当たり1~21個のマイクロプラスチックを確認した。
 大きさは肉眼では見えない100~200マイクロメートル(マイクロは100万分の1)が最多。個数は河口に近い方が多く、新しい地層ほど増える傾向にあった。
 材質は、レジ袋に使われるポリエチレン、菓子袋として利用が多いポリプロピレンとポリエチレンの複合素材、食品トレーなどのポリスチレンが多かった。

◆首都圏3100万人が川を通じて排出

東京湾海底で見つかった微細に分解されたプラごみはどこから来たのかー。「プラごみを出したのは首都圏で暮らす私たち」と、東京理科大の二瓶泰雄教授(河川工学)は指摘する。
 東京湾へ流入する江戸川、荒川、多摩川などの流域には約3100万人が暮らし、日本の人口の約2割に及ぶ。生活圏から出たプラごみは、身近な川を通じて流れ込んでいる。海底は大量消費社会の痕跡を示す「プラスチック塚」のようだ。
 東京湾に流入する正確なプラごみの量は分かっていない。参考になるのは米研究チームの推計で、2010年には日本の陸から海へ年間2万~6万トンのプラごみが流出。同年のプラスチック消費量(970万トン)の0・2~0・6%に当たるという。単純に考えると、ある地域の消費量の1%弱が海に流れ込んでいることになる。

水路に浮かぶレジ袋(右)

◆消費者の行動がカギ

 環境省は20年11月、千葉県市川市漁協の協力を得て20日間、東京湾海底のごみを回収。1348個のうちプラスチックは85%を占めた。食品や菓子の包装袋が多く、賞味期限の記載が半世紀以上前の「1961年」もあった。
 二瓶教授によると、川の水に含まれるマイクロプラスチックの濃度は都市部ほど高い傾向にある。一方で、多くのハイカーが訪れる群馬、栃木、福島、新潟の4県にまたがる尾瀬の川は濃度がゼロ。「72年から尾瀬で始まったごみ持ち帰り運動の効果が大きい」と分析する。

荒川の川岸に漂うペットボトル

 政府は4月、プラスチック資源循環促進法を施行し、スプーンなど使い捨てプラの削減を事業者に義務付ける。海のプラごみ汚染を改善する一歩にできるかは、消費者の行動にもかかっている。

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