海のプラごみ 楽しく学ぼう 東京湾 ドローンで回収体験

2022年1月16日 06時33分

海中につるしたロープに付着したカキを見せてもらう子どもたち

 高度成長期から東京湾には微細なマイクロプラスチックという見えない負の遺産が積もり続ける。横浜市金沢区の八景島シーパラダイスでは楽しみながら海のごみ問題を知ってもらう取り組みが始まっている。

◆横浜・シーパラ SDGsイベント

 昨年十二月中旬、屋外施設「うみファーム」に集まった親子連れら十人に、スタッフの田渕いるかさん(24)が問い掛けた。「皆さんは今、どこにいるでしょうか。生き物がたくさんいる東京湾です」。土日祝開催の約三十分のイベント「東京湾ワンダーウォッチャーズ」の始まりだ。

八景島シーパラダイスで海面のごみを拾うドローン(左)を操作する子どもたち=いずれも横浜市で

 田渕さんが海中に垂らしていたロープを引き上げると、カキがこびり付いていた。「毒はあるの?」と子ども。「実は海をきれいにするのに役立っているんです」とカキの海水をろ過し浄化する働きを紹介した。
 続いて見せたのは、周りの海で回収したごみの入った水槽。田渕さんが汚れた長靴を引き上げると子どもたちは「うえー」と叫んだ。中では魚がごみをすみかにし平然と泳いでいる。

海面に浮かんでいたプラスチックごみ

 「すみかとして使えるなら良いと思う? プラスチックがずっと海の中にあると砕けて小さくなり、魚が食べちゃうんです」。人間も知らず知らずマイクロプラスチックを食べている可能性があるとの説明に、大人たちも驚いた。
 シーパラは昨秋、フランス製のごみ回収ドローン「ジェリーフィッシュボット」を日本で初めて導入しイベントや清掃で活用する。前方にカメラが付いており、映像でごみの場所を見ながらリモコンで動かせる。取り付ける網によっては二ミリ程度のプラスチック片まで回収できるという。

うみファームのそばを泳ぐフグ

 イベント参加者は手元でリモコンを操り、海面のペットボトルを回収。海が大好きという同市港南区の小学三年丹後富貴(ふき)さん(9つ)は「海のごみはポイ捨てかなと思っていたけど、風に乗って来ているんだと知った」。毎週のように訪れるシーパラの展示から学んだことをノートにまとめ、環境問題にも関心を寄せている。「プラスチックじゃなく自然の木とか、なるべく海に優しいものを使いたい」

東京湾ワンダーウォッチャーズの取り組みについて語る八景島シーパラダイス総支配人の高橋直人さん

 スタッフの菊池翔太さん(33)によると、海に面した建物の下で、七十リットルのごみ袋六袋分をドローンで回収した日もあったという。
 国連のSDGs(持続可能な開発目標)には「海の豊かさを守ろう」という項目もある。高橋直人総支配人(48)は「SDGsという言葉が出てくる以前から『海育(うみいく)』として、生き物を育てて食べる機会を提供してきた」と話す。SDGsをきっかけに、海の環境を考える取り組みをさらに進めた。水族館はきれいな海を見せる場だが、実際にはそうでない海もある。「それを将来変えていけたら」と願う。

◆人の摂取量 1週間にクレカ1枚分?

 大きさ五ミリ以下のマイクロプラスチックが問題とされているのは飲料水や海産物などを通じて人が摂取している可能性が指摘され、健康への影響が未知数だからだ。世界自然保護基金(WWF)は二〇一九年、人は週平均で最大五グラム摂取していると発表。クレジットカード一枚分に相当する量で世界に衝撃を与えた。ただ数値はプラスチック片一個を何グラムと計算するかで異なる。基となった豪ニューカッスル大学の研究では、世界各地の調査を分析し、人の摂取量を週平均で約二千個と推定している。
 WWFジャパンの三沢行弘プラスチック政策マネージャー(50)は「人体が吸収するのか、排出できるのかも確認できていない」と警鐘を鳴らす。WWFは海のプラごみに関して国際的な協定をつくることを提言しており、二月に開かれる国連環境総会で初めて議論されるのか注目される。

◆春から新連載「明日への扉」

 世界は今、岐路にあります。新型コロナ禍で貧困や経済格差の課題は鮮明になり、相次ぐ災害が気候変動の警鐘を鳴らし、誰もが尊重される社会への歩みも道半ばです。東京新聞では、より良い未来を模索する動きを取材しながら議論するチームをつくりました。国連のSDGsを鍵にして、さまざまな課題を考えます。「明日への扉」と題して、今春から月一回お届けする予定です。
 文・神谷円香/写真・木口慎子
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