<全文>岸田文雄首相、初の施政方針演説 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

2022年1月17日 15時54分

◆気候変動問題への対応 と多様性の尊重

岸田文雄首相

 過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。
 2020年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。
 同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。2050年カーボンニュートラル実現には、 世界全体で、年間1兆ドルの投資を、2030年までに4兆ドルに増やすことが必要との試算があります。
 我が国においても、官民が、炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。
 2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。
 どの様な分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。
 送配電インフラ、蓄電池、再エネはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や、地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見出していきます。
 もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、 特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。
 いわば、「アジア・ゼロエミッション共同体」と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。

記者のワンポイント解説 岸田首相が強調した水素・アンモニアは、燃焼時に温室効果ガスのCO2を出さない燃料として注目され、火力発電や車の燃料などとして、化石燃料からの置き換えが目指されています。ただ、現状は、水素・アンモニアは天然ガスなどから作られることが多く、製造時のCO2排出をゼロにすることが課題。輸送コストの高さなども実用化のハードルです。岸田首相は水素・アンモニアによる火力発電所に取り組むことを掲げ、アジア各国と連携して、関連技術や国際調達網の構築を先導する意欲を示していますが、環境団体からは事実上の石炭火力発電所の延命策だと批判されています。
 気候変動対策をエネルギー分野に限定せず「経済社会全体の大改革」の道筋を示すとした点も注目されます。エネルギー供給構造の変革だけでは、脱炭素社会は実現できませんが、新型コロナ禍で非正規雇用の女性らが苦境に陥ったように、社会経済の大きな変化によって苦しむ人が出ないよう「公正な移行」が求められます。



岸田文雄首相

 新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会です。
 人生や家族の在り方が多様化する中、女性の経済的自立や、コロナ下で急増するDVなど女性への暴力根絶に取り組みます。
 孤独・孤立に苦しむ方々に寄り添い、支えるため、NPO等の活動をきめ細かく支援するとともに、国・自治体・NPOの連携体制を強化します。
 少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも、喫緊の課題です。
 不妊治療の範囲を拡大し、4月から保険適用を始めます。
 こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、「こども家庭庁」を創設します。
 こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、こどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。
 消費者という視点から、本年4月の成年年齢の引き下げを控え、若者の消費者被害防止に集中的に取り組みます。

▶5ページ目 地域活性化と災害対策へ続く

関連キーワード


おすすめ情報

主要ニュースの新着

記事一覧