<全文>岸田文雄首相、初の施政方針演説 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

2022年1月17日 15時54分

◆外交・安全保障

岸田文雄首相

  厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される一年です。
 私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、「新時代リアリズム外交」を展開していきます。
 「新時代リアリズム外交」の第一の柱として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則を重視していきます。
 これらを共有する米国のバイデン大統領とは早期に会談し、我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、地域の平和と繁栄、そして、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていきます。
 豪州のモリソン首相とは、円滑化協定に署名し、安全保障協力を強化するなど、「特別な戦略的パートナーシップ」を新しいステージへと引き上げました。
 同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で、初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です。
 最重要課題である拉致問題について、各国と連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。
 日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。
 我が国が提唱し、推進する「自由で開かれたインド太平洋」の考え方は、多くの国から支持を得ています。
 日米豪印では、ワクチンや質の高いインフラ整備など、実践的な協力が具体化しており、協力を前へと進めます。
 ASEANや欧州などパートナーとも連携を強化します。
 TPPの着実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大に取り組みます。信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」の実現に向け、国際的なルール作りにおいて、中心的な役割を果たしていきます。

岸田文雄首相

 地域の平和と安定も重要です。
 中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。
 ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、2018年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、2018年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで、 粘り強く交渉を進めながら、エネルギー分野での協力を含め、日露関係全体を国益に資するよう発展させていきます。
 重要な隣国である韓国に対しては、我が国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていきます。
  第二の柱として、気候変動やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を含め、地球規模課題に積極的に取り組みます。
 6年前、オバマ大統領は、原爆資料館で「核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」と記帳し、自作の折り鶴を残しました。被爆地広島出身の総理大臣として、私は、この思いを引き継ぎ、勇気を持って 「核兵器のない世界」を追求していきます。
 外務大臣時代に設置した「賢人会議」の議論を更に発展させるため、各国の現・元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げます。本年中を目標に、第1回会合を広島で開催します。
 貧困削減への貢献に向け、国際開発協会に対して、過去最大の約34億ドルを拠出します。
 TICAD8では、コロナ後を見据えた、アフリカ開発の針路を示していきます。
  第三の柱は、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組です。
 北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません。
 こうしたミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を守り抜いていきます。
 このため、概ね1年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。
 これらのプロセスを通じ、いわゆる「敵基地攻撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化します。
 海上保安庁と自衛隊の連携を含め、海上保安体制を強化するとともに、島嶼防衛力向上などを進め、南西諸島への備えを強化します。
 海外で邦人等が危機に晒された際の輸送に万全を期すため、自衛隊法の改正案を今国会に提出します。
 日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。

記者のワンポイント解説 被爆地広島出身の岸田首相は、自らが外相時代に設置した、核軍縮の道筋について各国の有識者が話し合う「賢人会議」の議論をさらに発展させるため、各国の首脳級の参加を目指した「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げる意向を表明しました。ただ、核兵器の開発から使用までを全面的に禁じる「核兵器禁止条約」の発効から22日で丸1年となりますが、演説では言及しませんでした。
 一方、17日には北朝鮮が今年4回目となる弾道ミサイルを発射。首相はこうした情勢を踏まえてか、憲法9条の専守防衛から逸脱する「敵基地攻撃能力」について「現実的に検討する」と表明。その踏み込みぶりは、核廃絶に向けた取り組みとは対照的でした。

▶7ページ目 憲法改正と統計の不適切処理へ続く

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