「融和と結束」どこへ…バイデン大統領就任1年 トランプ流「分断」今も、国内外で苦境続く

2022年1月17日 06時00分

バイデン米大統領=AP

 バイデン米大統領は20日正午(日本時間21日午前2時)に就任から1年を迎える。融和と結束を訴えてスタートしたものの、野党共和党の反発は強まるばかりで、国内政策や外交にも影響。トランプ前政権がもたらした分断による負の悪循環から抜け出せないでいる。(米西部アリゾナ州フェニックスで、吉田通夫)

◆「バイデン氏は国を…」トランプ節なお健在


米西部アリゾナ州で15日、今年初めて開いた集会で演説するトランプ前大統領=吉田通夫撮影


 「バイデン氏は国を辱めている」。15日、アリゾナ州の農場で開かれた共和党の集会で、トランプ前大統領が気勢を上げた。マスクなしの参加者であふれるなか、1時間半以上にわたり収まらぬコロナ禍などを挙げてバイデン氏と民主党をこき下ろし、会場を何度もわかせた。自身が落選した2020年の大統領選が「盗まれた」という主張も相変わらずだ。
 参加した農家のモーガンさん(72)は「国が分裂して対立することが良くないことは分かっているけど、バイデン政権は共産主義だ」と、トランプ氏の主張を信じ込んでいる様子だった。
 調査機関パブリック・アジェンダなどの昨年12月の世論調査によると、10年後に民主党支持者が多いリベラルと共和党支持者が多い保守派の溝が埋まると思う人は9%だけで、42%は深まると答えた。米プリンストン大などは昨年12月に、人々が会員制交流サイト(SNS)で好きな情報しか見ずに偏ってきているという2極化についての研究結果を発表。この2極化が共和党と民主党の議員たちの過激な言動を「助長している」という。

◆国内外で深まる溝 政策は暗礁へ

米西部アリゾナ州で、トランプ前大統領が呼び掛けた集会に集まった参加者。マスクをした人はほとんどいなかった=吉田通夫撮影

 深まる溝は政策にも影響している。共和党支持層はバイデン政権の求める新型コロナウイルスのワクチン接種に反発し、規定回数を終えた人は人口の63%弱。先進7カ国(G7)で群を抜いて低い。
 オミクロン株の出現で新規感染者数は1日当たり100万人を超えるなど激増。病欠や隔離による人手不足が物流の混乱に拍車をかけ、さまざまな商品が品薄となって物価が高騰、支持率の下落につながっている。バイデン氏は求心力の低下から民主党内の造反も鎮められず、看板政策の大型経済政策は暗礁に乗り上げた。
 昨年12月には民主主義陣営のリーダーとして日本や欧州など同盟国を集めて「民主主義サミット」を開催した。しかし、対立する中国に「米国の基準で世界をふたつの陣営に分け、分裂と対抗をあおっている」(外務省報道官)とやり返された。

◆11月の中間選挙へ「トランプ批判」解禁?

 国民融和のためにトランプ氏批判を控えてきたバイデン氏だが、今年1月6日の議会襲撃1年に伴う演説では「敗北した前大統領」と呼び、「うそを広めている」と激しく非難。議会を襲撃した支持者や「彼の怒りを恐れる多くの共和党議員」も厳しく批判した。
 政権幹部によると、バイデン氏は、トランプ氏が広める陰謀論や共和党への支配を放置すれば「民主主義のリスクになる」と語ったという。
 米シンクタンク、カーネギー国際平和財団のフェルドスタイン氏は「バイデン氏の演説は民主主義を守るために必要だったと思うが、分断の流れを止め国の勢いを取り戻せるかどうかは分からない」と語った。11月の米議会中間選挙に向けて、バイデン氏の苦境は続きそうだ。

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