<ひと物語>治療と仕事、両立を支援 がん患者用の帽子開発・村田里依さん

2022年1月17日 07時12分

スーツにも合うケア帽子を制作した村田里依さん=いずれも狭山市で

 日本人の二人に一人がかかり国民病とされる「がん」。乳がんを患う村田里依さん(51)は、がん治療を受けながら働く女性のためのケア帽子「Tao Caps(タオキャップス)」を開発した。がん治療と仕事を両立する自身の経験から、「自分らしく生き抜く手助けになれば」と願う。
 「気持ち良く仕事に向き合えるように」という思いを形にした。抗がん剤治療の副作用で脱毛し、ウイッグを着けた時に汗ばんだり、皮膚がかぶれたりした経験から、通気性を第一に考えた。スヌードのように筒状で頭頂部が開いているが、ゆったりとしたつくりで生地が垂れるため、頭髪が抜けた部分が見えないようになっている。

通気性と着け心地を重視したケア帽子「Tao Caps」

 飾りにビジューが付くタイプとスカーフ付きのタイプを用意し、スーツに合い、仕事中に違和感なくかぶれるデザインにした。
 クリスマス間近だった二〇一三年十二月。村田さんは左右の胸の大きさが違っているのに気が付いた。固くしぼんだ左胸。痛みはなかったが腫瘍が見つかり、翌年一月、精密検査でステージ3の乳がんと診断された。左脇のリンパ節にも転移しており、すぐに抗がん剤治療を始めた。
 家族との時間を増やすため、勤めていた証券会社を退職する選択肢もあったが、子育てしながら仕事にまい進してきた「自分らしさ」を思い、働きながらの治療を決めた。抗がん剤を投与した日は副作用で一日中、吐き気や頭痛に襲われた。まつげや眉毛が無くなり、髪の毛もまばらに抜けた。「落ち武者のような頭」(村田さん)を見て落ち込むのはやめようと、理容室で髪をそった。
 ウイッグやニット帽を着けて外出した当初、人の目を気にしてしまう自分がいた。実際に周りからジロジロとした視線を感じたこともあった。「何も悪いことをしていないのに」。ケア帽子開発の考えはこのころに芽生えた。
 半年間の抗がん剤治療を経て手術で左胸を全摘し、リンパ節の一部も摘出。その後もリハビリと放射線治療に励んだ。しかし、一九年八月に右脇と心臓のリンパ節への転移が分かった。がんの進行度はステージ4だった。
 「やりたいことをやって良いよ。村田さんがバンザイしてゴールテープを切るまで伴走するから、安心して仕事をして」。痛みを和らげる緩和ケアの担当医の言葉にも後押しされ、心のモヤモヤが吹っ切れた。「やりたいことをやった先に死が待っているとしたら、バンザイしてゴールテープを切るようなもの。死を極端に恐れながら生きるのはやめよう」。昨年、会社を立ち上げ、ケア帽子の開発・販売にあたっている。
 ケア帽子をかぶった姿から、治療中と気付かれるかもしれない。しかし、隠さなくても良いと思っているし、患者が人の目を気にせずに過ごせる社会になればと願っている。「治療と仕事を両立するのは大変。それに向き合う自分に誇りを持って良い。病気を周りに知ってもらった上で、自分らしく生き生きとやりたいことができる帽子になれば」(飯田樹与)
<むらた・りえ> 1970年12月生まれ、狭山市在住。大手証券会社に勤務していた2013年に乳がん(ステージ3)が判明、地元のケーブルテレビ会社に転職後の19年に再発した。21年に「Tao Corporation」を設立。ケア帽子(9900〜1万1000円)は同社のインターネットサイトで販売。

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