<社説>首相施政方針 政策実現の具体策欠く

2022年1月18日 07時48分
 通常国会がきのう召集され、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。今年一年間の内政・外交運営を説明し、今夏の参院選で国民の判断材料となるような方向性を示すべき演説だが、長期的な政策目標を列挙するにとどまり、実現に向けた具体策には乏しかった。
 首相は演説冒頭、変異株オミクロン株の感染急拡大を受けて新型コロナウイルス対策に「全身全霊で取り組む」と強調した。国民の命と暮らしを守るのは政府の責務であり、首相の姿勢は当然だ。変異株の特徴や状況の変化に応じた柔軟で迅速な対応を求めたい。
 ただ、三回目の国会演説にもかかわらず、具体像を依然結ばないのが「新しい資本主義」である。
 首相は、新自由主義が生んだ弊害を乗り越え、持続可能な経済社会実現に向けた「経済社会変革」が始まっているとして、「成長と分配の好循環による『新しい資本主義』により、世界の動きを主導する」と意気込みを示した。
 弊害を是正する必要性は認めるとしても、その実現方法は今のところ見えてこない。
 首相が成長戦略に挙げた、デジタルを活用した地方の活性化や経済安全保障などが成長にどう結び付くのか、首相はより詳細に道筋を説明すべきではないか。
 一方、分配戦略としては「賃上げ」「人への投資」「中間層の維持」を掲げた。国民が知りたいのは、それらをどう実現するのかの具体策と首相の決意だ。新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を今春、取りまとめると言うだけでは、説得力に欠ける。
 外交政策では「核兵器のない世界」を目指して「国際賢人会議」を創設し、年内に被爆地・広島で初会合を開くと表明したが、発効から一年を迎える核兵器禁止条約には触れなかった。
 核なき世界を目指す姿勢には賛同するが、求められるのは具体的な進展だ。核保有国と非保有国の橋渡し役を本当にできるのか、手腕が厳しく問われる。
 施政方針演説を受けて、各党代表質問や予算委員会審議が行われる。政府は今国会に五十八法案を提出するが、賛否が分かれる対決法案は見送る方針だという。
 波風立てずに国会を乗り切り、参院選に臨もうとするのなら、党利党略と言うほかない。国会審議では、こうした岸田政権の本質にも迫る論戦を期待したい。

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