こんな時代の「新聞記者」とは…米倉涼子さんが演じて分かったこと Netflixで新ドラマ配信中

2022年1月19日 06時00分

ドラマ「新聞記者」から。信念に従って突き進む主人公・松田杏奈を演じた米倉涼子さん

 実際に起きた公文書改ざん事件を題材にした新作ドラマ「新聞記者」の世界配信が始まった。インターネットの普及で斜陽を迎え、世界的に権力者やその支持者から圧迫を受け、国内では「マスゴミ」などと侮蔑される現代の記者。今回のドラマで、そんな時代の女性記者を演じた俳優米倉涼子さん(46)にとっても、当初その印象は明るくなかったというが、演じてみて分かったこともあるという。(木原育子)

◆新聞?「生活必需品じゃない」「ぬるいよ」「マスゴミ」…

 インターネット動画配信大手「ネットフリックス」でドラマの世界配信が始まった13日、東京のJR新橋駅周辺。「こちら特報部」は、実際の新聞記者のイメージを聞いてみた。
 「え?新聞?ごめんなさい、生活必需品ではないです」。コンサルタント勤務の男性(31)が淡々と語る。
 暴力団離脱者らの社会復帰支援の相談業務をしているという男性(67)は、新聞記者の知り合いも多いとか。「昔と違って、最近の新聞記者はぬるいよ。権力と本当に対峙する記者は、社内でもなぜか干されるらしいから、おとなしくなっちゃうのかな。首相会見の中継を見ても、権力に対する番犬というより借りてきた猫。本当に情けないよ。だいたいね…」と止まらない。
 中華料理店でパート勤務する女性(37)には「子どもも私も新聞が大好き。読むとほっとする。頑張ってくださいね」と励まされた。
 明治学院大社会学部2年の男子学生(20)は顔をしかめた。「事件の被害者にズケズケ取材したり、どういう神経してるんだって思う。面と向かって言いにくいですが、だから『マスゴミ』って言われるんですよ」
 心が折れそうだが、これが世間の本音。悪者の立場に立たされることもある。

◆当初の新聞記者の印象は…「黒」

「こちら特報部」のインタビューに答える俳優の米倉涼子さん=東京都千代田区で

 そんな現場で働くひとりを演じた米倉さんに、当初、新聞記者にどんな印象を持っていたのか尋ねると、「黒」という一言が返ってきた。やはりイメージは良くなかったのか。「そうね、真面目は真面目なんだろうなって。いつも黒ベースの服を着ている感じというか…」
 米倉さんはちょうど1年前の今ごろ、本紙編集局を訪れ、新聞製作の現場を見て回った。役作りのため、事件取材の経験がある同世代の女性記者に「逆取材」。記者もその取材を受けた一人だった。遺族取材の際の言葉の選び方、官僚や政治家に直撃取材する時の立ち回り方…。かばんの中身や靴のヒールの高さ、休日の過ごし方、記者を志した理由など、現役記者のありのままを知りたがった。

◆「普通の人と違う目の鋭さがあった」

 今回のドラマは、実際にあった国有地売却を巡る公文書改ざんの政治スキャンダルが題材で、米倉さんらが政権の闇と対峙していく展開。だが、巨悪と闘う紋切り型のヒーローではない。監督に求められたのは正義感は強いが穏やかで優しい主人公。託したのが「目」だったという。
 「逆取材の時、取材対象者より前に出てはいけないと言われたことを強く覚えている。あくまでターゲット(取材対象者)が主役で、新聞記者は落ちてきた言葉を記事にするだけ。だから結局、いつまでたっても主役ではないって」
 それは「粘りと我慢」を意味する。情報を引っ張りだそうと、前に出たくなる。どんな言葉も漏らしたくない。真実にたどり着こうとするせめぎ合いの中で「あの目」が生まれる、と。
 「新聞記者は普通の人と違う目の鋭さがあった。強くあっちゃいけないけど、強くないと続けられない。演じてみて、大変しんどい仕事だと思いました」
▶次ページ「国内外で強まる記者への弾圧」に続く
前のページ

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧