こんろで調理中、引火事故多発 「着衣着火」袖口に注意!

2022年1月19日 10時18分

着衣着火は、こんろで調理中の事故が多い=名古屋市消防局が作成した動画から

 衣服に火が付く「着衣着火」の事故が後を絶たない。昨年末には栃木県の芸術大で学生が作品用の鉄板を切断中、火花が服に引火し、重いやけどを負って亡くなった。家庭では特に高齢者の事故が多く、こんろで調理中に被害に遭うケースが目立つ。専門家らは、防炎加工されたエプロンを着用するなどの予防策を呼び掛ける。 (細川暁子)
 「寝ぼけ眼で奥の調味料に手を伸ばした時、手前のこんろの火がパジャマの袖に燃え移った。気づいた時には、肘から手首に静かに燃え広がっていた」。千葉県に住む千葉深雪さんは数年前、朝食を料理中に経験した着衣着火の恐怖を振り返る。すぐ水をかけて火を消し、やけどにはならなかった。「それ以来、料理の際は緩めの服を避けるなど注意している」と話す。
 消防庁によると、二〇一八年は百十一人、一九年は百六人、二〇年は九十五人と、年に約百人が着衣着火により死亡している。その八割以上が六十五歳以上の高齢者だ。医療機関を通じて国民生活センターに寄せられた着衣着火の事故は昨年十月までの約十一年間で八十六件。うち女性が六割を占め、こんろ使用中が三十三件と最多だった。
 中京病院(名古屋市)救急科第二部長の黒木雄一さん(46)によると、高齢者は特に、火が付いたことに気づくのが遅れるなどして、やけどが広がりやすく、傷も深くなりがちだ。高齢者は皮膚の再生能力が低く、細菌感染が原因となって亡くなる例も多い。「仏壇のろうそくによる着衣着火も多い。高齢者には火の代わりにLEDライトを薦めたい」と話す。
 「表面フラッシュ」と呼ばれる現象にも注意が必要だ。衣服の生地の表面に細かい繊維が毛羽立っていると、空気と触れる面積が大きいため、火が付くと一瞬で燃え広がる。
 衣料品メーカーのワコールは、表面フラッシュが起きる可能性があるとして、一四年以降に販売した一部の商品の回収を進めている。裏毛や裏起毛付きのパジャマを着て、こんろで調理していた購入者らから着衣着火の報告が六件あったという。昨年十月末時点で販売数の62・6%に当たる約六千三百枚を回収した。
 製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センターの佐藤秀幸さん(56)は「起毛素材やパイル生地、毛玉がたくさん付いた服などは空気を含みやすく、表面フラッシュが起きやすい」と指摘。調理の際は、防炎加工されたエプロンや腕を守るアームカバーなどを着用するよう呼び掛ける。

◆まず水で消火 だめなら… 「止まれ」「倒れろ」「転がれ」

 万一、着衣着火してしまったら、どうすればいいのか。名古屋市消防局予防課の小林真樹人さん(40)は「まず水を掛けて消火」と強調する。ただ、背中側が燃えるなど、水で消すのが難しい場合は、「ストップ(止まれ)」「ドロップ(倒れろ)」「ロール(転がれ)」が合言葉となる。火が付いたまま走り回ると、風を受けて火の勢いが大きくなる。その場に止まって倒れ込み、燃えている部分を地面に押し付けながら転がって火を消す。
 黒木さんによると、水で消火して熱源を取り除いた後、やけどの部分を冷やしすぎると、血流が滞って治りが悪くなる。患部に氷や冷却剤などを直接当てるのは逆効果だという。「着衣着火でやけどをした場合、軽症では済まないことが多い。すぐに病院で受診を」と話す。
 同市消防局は、着衣着火の予防法や対処法などを紹介する動画を公開している。

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