洋酒好きが高じて副業で…能登の食材使った蒸留酒「のとジン」開発 IT企業勤務の男性、東京・港区から石川県に移住

2022年1月19日 17時00分

のとジンのビンを持つ松田行正さん=石川県珠洲市上戸町北方で(上井啓太郎撮影)

 東京都港区から石川県能登地方の珠洲すず市に昨春移住した松田行正さん(52)は洋酒好きが高じ、能登のユズやカヤ、藻塩もしおなどを使った独自の蒸留酒「のとジン」を開発した。本場英国に出向いて交渉し、試作品が完成。親交のあるバーのマスターのお墨付きも得て販売を始めた。軌道に乗れば能登で蒸留所をつくる夢も膨らむ。 (上井啓太郎)
 2020年春。コロナ禍で自宅時間が増えた中、「能登ヒバ」の香りが癒やしとして流行しているニュースがラジオで流れた。石川県に縁がなかった松田さんと珠洲市とが結び付いた。
 松田さんは広島市出身。北海道大を卒業後、IT企業に勤務し港区に住んでいた。洋酒好きで、仕事終わりに買って飲んだり、バーに通ったり。いつか蒸留所をやってみたい漠然とした思いはあったが、スキルも必要で設備も大規模。「夢物語で終わるだろう」と考えた。
 17年、東京・飯田橋のお気に入りバーで、マスターが「クラフトジン」を教えてくれた。小規模な蒸留所で生産する個性的なジン。英国に多数あると聞き、これなら自分でもできるのではと感じた。実現には鍵となる「ボタニカル」(原料植物)が必要で、その時に聞いたのが能登ヒバ。これだと思い立ち、能登ヒバのアロマディフューザー(拡散器)を取り寄せた。「お酒にも合いそう」と、能登につてはつくれないかと自治体などに相談した。

蒸留所「イン・ザ・ウェルシュ・ウインド」=英国ウェールズで(松田行正さん提供)

 風土を学ぶため、金沢大主催「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」に通い、出会った人から能登のユズやカヤなど地域の植物を学んだ。20年9月、英国・ウェールズの蒸留所「イン・ザ・ウェルシュ・ウインド」に行き交渉。能登の原料で試作品を造ってもらうことになった。
 よい香りが強すぎて能登ヒバはかなわなかったが、21年2月にユズ、カヤ、ゲッケイジュ、クロモジ、藻塩を入れた2種類の試作品が完成。スタンダードなジンと、能登の原料を2倍にしたジン。「バーで使いやすいのはこっちだけど、特徴を出すとしたらこっち」。マスターのお墨付きをもらい、後者のジンをウェールズで生産、販売することにした。
 同3月に珠洲市に引っ越し、本業のIT会社のテレワークをこなしつつ、準備を進めている。販売実績を積み、製造免許を取ったら能登に小さな蒸留所を作る計画だ。「まだやらなきゃいけないことがたくさんある。実感が湧かない」。そう言いつつ、目を輝かせる。
 1月末までは資金協力者に商品を送る「クラウドファンディング」形式で販売し、通常の通信販売はオンラインショップで2月から始める。

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