まん延防止の効果は? 割れる専門家の評価 「行動抑制に期待」と「重症化率低いなら正当性低い」

2022年1月20日 06時00分
 新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」はどこまで効果があるのか。政府分科会の専門家らが「感染リスクの高い行動を控えてもらう効果がある」と話す一方、経済学者らの間には、オミクロン株の重症化率が低いことから「有効性は低下している」との見方もある。(池田悌一、沢田千秋)

◆尾身氏「非常に重要」

 政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は19日の会合後、報道陣にこう強調した。「オミクロン株は感染拡大のスピードが速い。ピークが来てから対策を打つのでは遅すぎる。この時期に、感染を下火にするため法的な措置を取ることは非常に重要だと思う」

尾身茂氏

 重点措置によって「人々が感染リスクの高い行動をしないよう、気をつけてもらえれば」と期待し、今回の重点措置のキーワードとして「人流抑制ではなく人数制限」を挙げた。
 換気の悪い場所で、大人数がマスクをしっかり着けずに大声で会話をして感染が広がっていると指摘し、「4人ぐらいで静かに飲食し、話すときはマスクをする。そういう行動をすれば、飲食店を閉める必要はない」との見解を示した。
 釜萢かまやち敏・日本医師会常任理事も「重点措置は、市民らにメッセージを出すという効果は非常にある」と話した。

◆「意味なくなるかも」

 「重点措置がなくても東京の集団免疫は2月下旬には50%近くになり感染のピークを越える。今までほど重点措置の意味がなくなるかもしれない」。名古屋工業大の平田晃正教授(医用工学)はそう説明する。
 集団免疫は社会で一定割合の人が免疫を持った状態を指す。東京の集団免疫の推定は17日時点で約36%。第5波では40%でピークを越えた。
 平田氏は「会食の4人制限などの感染対策を続けていれば、自然免疫とワクチン効果で2月中旬から下旬に状況は改善する可能性がある」と話す。重点措置を適用済みの沖縄県では、既に集団免疫は40%に達した可能性がある。英国は強い規制を敷かず、拡大から1カ月余で感染者は減少に転じた。

◆感染拡大で接触機会減少

 第5波の緊急事態宣言中、期待したほど人出は減らなかったが、感染は急減した。東京大の仲田泰祐准教授(経済学)は「重点措置や宣言の効果に関して明確な試算がないのは理由がある」と指摘。宣言などで人の接触機会を抑えれば感染は減るが、感染拡大によって人が接触機会を減らすという現象もあり、効果をデータから正確に読み取ることが難しいからという。
 第5波が急減した理由を、仲田氏は「医療逼迫ひっぱくが起こり、感染したくないと多くの人々が感じると、人と人との接触が減るという効果が大きい」と推測。重点措置の効果は「一方向の話でしかない」とし、「医療逼迫が起きないと人々の行動は変わりにくいという知見は、広く受け入れられている」と説明する。
 オミクロン株は感染力が高く、隔離される濃厚接触者も増え、医療機関やインフラの機能停止が懸念される。創価大の畝見達夫教授(知能情報学)の試算では、20日以降に濃厚接触者を追跡・特定しない場合でも、東京の新規感染者数は1割程度しか増えなかった。畝見氏は「追跡は保健所の負担が大きいが、やめても差はほとんどない。コストを考慮して政策を決めるべきだ」と提案する。
 仲田氏は「行動制限は社会経済に大きな損失を与える。オミクロン株の重症化率、致死率が低いなら、従来の政策の正当性、有効性は低くなる」と話した。

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