ユダヤ人の少女、アンネ・フランクは日記の中でその人物を責め…

2022年1月20日 07時02分
 ユダヤ人の少女、アンネ・フランクは日記の中でその人物を責めている。ナチスの迫害から逃れるため、アムステルダムの隠れ家で共に暮らした歯科医師デュッセルさんのことである▼腹を立てるのも無理はない。デュッセルさんを隠れ家に誘ったのはアンネの一家だが、身勝手なところがある。ユダヤ人ではない恋人を通じて食べ物を手に入れることができたが、アンネの一家に分けることさえしない▼「命を救ってあげたとさえ言えるこのひとが、みんなに隠れてたらふくごちそうを食べ、しれっとして口を拭っているそのさもしさ、これにはあきれて言葉も出ません」(『アンネの日記』・深町真理子訳)。ユダヤ人同士助け合うべきなのにと思ったことだろう▼隠れ家をナチス側に密告したのも、同じユダヤ人だったと聞けば、強制収容所で亡くなった少女はどれほど悲しい顔をするだろう。米連邦捜査局(FBI)の元捜査官が率いる調査チームは密告したのはユダヤ人公証人であるという説を明らかにした▼自分の家族を守るためアンネの一家を裏切った可能性があるという。デュッセルさんもそうだが、過酷な状況下で生き抜くため、人は自分のことしか考えられなくなるのか▼密告者は誰か。それも気になるが、あらためて考えるべきは人が人を売り渡す状況をつくった真犯人である。間違いなく、ファシズムである。

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