人生のどん底 時が癒やす 映画「明け方の若者たち」 松本花奈監督

2022年1月20日 07時50分

北村と黒島のキャスティングは「2人の空気感が似ていると思って決めた」と話す=東京都渋谷区で

 大学生から社会人になる「僕」の視点で青春の甘酸っぱさを描いた公開中の映画「明け方の若者たち」。恋に仕事に主人公は揺れるが、「どん底になっても、時が癒やしてくれて思い出になることを表現したかった」と松本花奈(はな)監督(23)は語る。スクリーンから伝わるのは同世代に向けたエールだ。 (藤原哲也)
 印刷会社に就職が決まった大学生の「僕」(北村匠海)は、内定を祝う飲み会で、一人だけ雰囲気の違う年上の大学院生の「彼女」(黒島結菜)と運命的な出会いをし、交際を始める。仕事で壁に当たっても励ましてくれる彼女は救いだったが、ある日を境に連絡が途絶える…。
 カツセマサヒコの同名小説にほれ込み、映像化した。「内容が同世代としてすごくリアルに感じたし、描写が繊細なところにも引かれた。そこは大事にしたかった」。高校時代の通学路だったという東京・明大前駅近くの「くじら公園」が象徴的に登場するほか、下北沢や高円寺などでロケを行い、原作に漂う風景を忠実に再現する。
 描きたかった一つが「友達の良さ」だという。挫折する僕だが、会社の同期・尚人(井上祐貴)の存在によって少しずつ成長していく。「友達がいたからってどうにかなるわけではないけど、何となく『友達っていいな』と思って」。明け方の高円寺で、尚人と彼女と僕の三人で朝日を背に走るシーンなどに、そんな思いが表現された。
 中学から映像製作を始め、十六歳で初長編作品「真夏の夢」が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に正式出品されるなど早くから注目を集める気鋭。慶応大に在学中で、「監督をやっていく上で幅広い知識を身に付けることは大事」との信念から二足のわらじを履き続け、今春の卒業を目指している。
 映画界で女性監督はまだまだ少ない。「体力的な部分で埋められない男女の差はあると思う。そういったことを周囲が理解した上でいい環境に向かってほしい」と願う。一方で、同世代の映画離れを意識して「若い時にいいと思う作品と出合えると、付随して映画が好きになると思う。その『いい作品』に自分の作品が一本でも入るように面白いものを作りたい」と強調。今後はミステリーに挑戦することが目標という。
 「明け方の若者たち」は東京・渋谷シネクイントなどで上映中。

映画「明け方の若者たち」から。北村匠海(左)と黒島結菜 ©カツセマサヒコ・幻冬舎/「明け方の若者たち」製作委員会


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