<社説>DNA型の記録 抹消の条件定めた法を

2022年1月20日 08時04分
 「究極の個人情報」といわれるDNA型の鑑定は、刑事事件の証拠として、冤罪(えんざい)の防止などに役立っている。しかし、鑑定結果の保管や抹消について、欧米では法が整備されているのに、日本は未整備。名古屋地裁で「国は、無罪が確定した人のDNA型などを抹消せよ」との判決=写真=が出たのを契機に、法制化を急ぐべきだ。
 名古屋市内の男性が二〇一六年十月、暴行容疑で逮捕、起訴されDNA型、指紋、顔写真を採取・撮影されたが、一八年二月に無罪判決が確定した。
 その後も警察当局はDNA型などを保有し続け、男性は「プライバシー権の侵害だ」と抹消を求めた。データ保管や消去の条件を定めた法律はないが、国は「国家公安委員会の規則に基づいて運用し、問題はない」と主張していた。
 判決は、憲法一三条などを根拠に、DNA型などには公権力からむやみに利用されない自由が保障されると述べ、保有されたままでは、使われ方への不安から国民の行動を萎縮させかねないと指摘。「無罪確定後の保管の根拠は薄い」と、国に抹消を命じた。
 警察庁によると、〇五年に運用が始まったデータベースに登録されたDNA型は、二〇年で百四十一万件。近年は毎年十数万件ずつ登録されている。一方で、抹消は年間一万数千件。規則では、抹消の条件を「死亡したとき」「保管の必要がなくなったとき」としているが、同庁は保管する必要の有無は「個別の判断」と説明する。
 無罪判決の場合、米国(州法)ではDNA型は抹消され、ドイツの刑事訴訟法は「破棄されねばならない」と規定している。
 日本では、無罪判決以外にも、不起訴などのケースで同様の訴訟が起こされている。否認事件で長期の身柄拘束が常態化する「人質司法」もしかり。司法のあり方や人権意識において、わが国と国際標準との間に大きなズレがあることを改めて示したといえよう。
 今回の原告の男性は、提訴のきっかけは「犯罪者予備軍扱いだと感じたこと」と語った。国はこの言葉を軽く聞いてはなるまい。早期の法整備に着手するべきである。

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