<社説>国会論戦始まる 信頼と共感には程遠い

2022年1月20日 08時04分
 岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党代表質問がきのう始まった。政権が最優先課題とする新型コロナ対応を巡り、首相の答弁は従来の方針を説明する姿勢に終始し、首相が掲げる「信頼と共感」の政治姿勢には程遠い。
 変異株「オミクロン株」感染が急拡大する中、質疑は新型コロナウイルス対策が焦点となった。
 冒頭質問に立った立憲民主党の泉健太代表は、六月をめどに中長期的な新型コロナ対応を策定するとした政府方針を「遅すぎる」と批判。病床確保を強化する感染症法改正案の提出を「なぜ後回しにするのか」と追及した。
 首相は「現下の危機対応を行いつつ、これまでの対応を客観的に検証するため必要な期間だ」と述べた。
 首相は「最悪の事態」に備えると繰り返してきたが、改正案が国民の権利制限を伴う内容になるため、今夏の参院選で支持を減らしかねない要因はできるだけ排除しておこうとの狙いがあるのなら、党利党略との非難は免れまい。
 首相が常々強調する「聞く力」に疑問符が付く場面もあった。
 十八歳以下の子どもへの十万円相当の給付が昨年九月以降に離婚したひとり親世帯に届かない問題だ。夫の暴力が理由で離婚した母親が子どもを養育しているのに、元夫の口座に給付が振り込まれ、受け取れない場合があるという。
 泉氏は立民が特例給付法案を国会に提出したことに言及し、改善を求めたが、首相は「迅速に支給するため児童手当の仕組みを活用しており、基準日以降に離婚した世帯への制度的対応が難しい面がある」と取り合わなかった。首相はなぜ問題と向き合わないのか。
 立民の小川淳也政調会長は、首相の政権運営を「一見謙虚で、丁寧かつ低姿勢」と評する一方で、「熟慮に欠けた優柔不断な朝令暮改とも取れる」とも述べた。
 首相は施政方針で「『信頼と共感』の政治に向けて謙虚に取り組む」と強調したが、この日の答弁を聞く限り、野党の批判や提案を聞き流した印象が強い。これではとても、与野党論戦を通じて政策を磨き上げるという国会の機能回復にはつながらない。
 代表質問は二十一日まで続き、論戦の舞台は来週、衆院予算委員会に移る。参院選で岸田政権に対する評価が問えるよう、緊張感のある論戦を期待したい。

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