空き家解体、住民の不安解消 土浦市が特措法で初実施 倒壊危険、税金投入に不満も

2022年1月21日 07時41分

空き家から鉄くずや段ボールを運び出す市職員や解体業者=土浦市で

 放置された空き家によるトラブルが全国的に深刻化する中、空き家の活用や処分を促す目的で制定された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく空き家の解体が県内でも進んでいる。自治体は「近隣住民の不安がなくなるとともに、空き家問題に対する意識が高まるのでは」と効果に期待。住民もおおむね歓迎するが、税金を使うことに反発する声もある。(林容史)
 土浦市は十四日、同市荒川沖西の納屋の撤去作業に着手した。市が特措法に基づき、倒壊の危険性があるなどとして「特定空き家」に認定した建物を解体するのは初めて。所有者が分からないため、「略式代執行」と呼ばれる手続きを取った。
 市職員が略式代執行の宣言文を読み上げた後、解体業者がトタンの塀を取り壊し、納屋を囲んだ樹木などを伐採。納屋の中に残された段ボールや木くず、鉄くずなどを運び出した。事業費は百三十五万円で、二月末までに作業を終える予定。隣接する母屋についても対応を検討する。
 二〇一八年の総務省の住宅・土地統計調査によると、県内の空き家は十九万七千二百軒、空き家率は14・8%で、全国平均の13・6%を1・2ポイント上回る。
 国土交通省によると、一五年の特措法施行後、二一年三月末までに石岡、ひたちなか、笠間など八市が特措法に基づく行政代執行や略式代執行で、特定空き家十二軒を撤去している。
 土浦市が撤去を始めた納屋は、JR荒川沖駅から二百五十メートルの県道沿いの住宅街にある。市によると建築面積約三十平方メートルの平屋で、一九四〇年ごろの建築とみられる。二〇一三年、母屋に住んでいた独り暮らしの高齢女性が死亡して以来、空き家になっていた。一六年と一八年には強風でトタン屋根の一部が飛散し、近隣住民から「どうにかしてほしい」と相談が寄せられていたという。
 市は建物の相続人がいないことを確認。建物が傾いて隣家に接触しており、倒壊の恐れがあることから、二一年一月に特定空き家に認定した。
 買い物などでよく近くを通るという女性(80)は「建物が崩れるのではと近所の人たちが心配していた。安全になって良かった」と喜ぶ。隣家の女性(88)は「隣の屋根が外壁に食い込んで雨漏りに困っていた。他人の財産だから『壊して』とは言えない。子どもたちがけがをするのが心配だった」と打ち明けた。
 一方で、近所に住む男性からは「どうして税金を使って市が壊すのか。相続人がいないからと言って、前例にされては困る」と不満も漏れた。
 市は二一年十月末現在、市内で六百三十九軒の空き家を把握。うち十二軒を特定空き家に認定している。生活安全課空家対策係の酒井秀玲(ひであき)係長は「近隣住民が安心して暮らせるよう、所有者に空き家の危険性をきちんと説明し、粘り強く指導していく」と話し、「空き家を活用して地域を再生する取り組みも進めていく」と力を込めた。
<空家等対策の推進に関する特別措置法> 空き家の放置によるトラブルを解消し、活用や処分を促進するため2015年5月に施行。市区町村は(1)倒壊の危険性がある(2)衛生上有害となる恐れがある(3)景観を損ねている(4)周囲の生活環境を乱す恐れがある−住宅を「特定空家等」に認定し、所有者に修繕や撤去を指導、勧告、命令できる。勧告を受けた段階で、固定資産税減免の特例は解除される。

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