「核なき世界」へ期待と課題 保有国なお反対 核兵器禁止条約発効1年 締約国「議論に参加を」と訴え

2022年1月22日 06時00分
 核兵器を史上初めて違法で非人道的と定めた核兵器禁止条約が発効してから22日で1年を迎えた。新型コロナウイルス禍で核軍縮議論は停滞するが、今月に入って核保有5大国が核戦争防止をうたう共同声明を発表するなどの動きもある。条約に参加する非保有国は3月の第1回締約国会議に向け「核なき世界」への前進を期待する。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

◆批准国は59カ国・地域まで増加

核兵器禁止条約を巡る構図 チャート

 「核禁条約は核の使用への道徳的な壁を飛躍的に高めた。いつ、いかなる場所でも誰も使ってはならないという国際的な認識が強まっている」。ブラジルのロナウド・コスタ・フィリョ国連大使は本紙の取材に、条約の意義をあらためて強調した。同国は条約の前文で被爆者の苦難に言及するよう求めるなど先導役を担ってきた。今は署名後の批准に向けた準備段階だ。
 核禁条約の国連採択に尽力した批准国オーストリアの外交官は「条約は、なお核抑止力に固執する国々と非人道的な大量破壊兵器に対する議論を活性化させた」と評価する。発効時に51だった批准国・地域は、フィリピンやモンゴル、チリなどが参加し、59まで増加した。

◆5大国はNPT体制下での段階的削減を主張

核保有国の核弾頭数

 しかし、核禁条約に反対する米英仏中ロの核保有5大国の姿勢は変わっていない。ある保有国の外交官は「条約は難しさを増す安全保障環境を考慮しておらず、国際社会を分裂させる恐れがある」と批判。ブリンケン米国務長官は先月の記者会見で「何の役にも立たない」と切り捨てた。
 5大国の主張は、自らが加盟する核拡散防止条約(NPT)体制下での段階的な核の削減だ。NPTは5大国の核保有を容認する一方、核軍縮への交渉義務を課す。
 ただ、主張が対立する保有国と非保有国が議論できるNPT再検討会議は、新型コロナ拡大で2020年春から4度も延期。この間にも核の近代化などを進める保有国に非保有国は不満を募らせ、5大国は今月3日に「核戦争に勝者なし」として核削減への決意を示す共同声明を出さざるを得なくなった。

◆ドイツ、ノルウェーはオブザーバー参加

 3月22~24日にオーストリアのウィーンで開かれる初の核禁条約締約国会議では、参加する非保有国が核廃絶に向けて条約の枠組みや手続きなどについて議論するとみられる。北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツとノルウェーもオブザーバー参加する方針だ。他のNATO諸国も「会議から何が生まれるか楽しみにしている」(オランダ国連代表部)と関心を高めている。
 NATO諸国と同様、米国の核の傘に守られる日本は不参加の方針を変えていないが、議長国となるオーストリアの外交官は強調する。「人類の存在に関わる課題を真剣に話し合う開かれた会議だ。条約にはさまざまな見解があると思うが、この深遠な議論に参加しない言い訳にはならない」

核兵器禁止条約 核兵器の開発から生産、保有、使用までを全面的に禁止する国際規範。オーストリアやアイルランド、メキシコなど核非保有の中小国が中心となり、2017年7月に国連で採択。20年10月、発効に必要な50カ国・地域の批准を満たした。米英仏中ロの核保有5大国は参加せず、米国の核抑止力に依存する日本なども同調する。批准していない国への法的拘束力はない。

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