「東大」「医者」に強いこだわり見せた少年 専門家は相次ぐ事件との「連鎖」示唆 東大前刺傷事件から1週間

2022年1月22日 06時00分
 今月15日に東京大学弥生キャンパス(東京都文京区)前で、大学入学共通テストの受験生ら3人が刃物で刺された事件から1週間。殺人未遂容疑で警視庁に逮捕された名古屋市の私立高校2年の少年(17)の言動からは「東大」や「医者」への強いこだわりが浮かぶが、少年と事件を結ぶ線は見えない。専門家は電車内で相次ぐ刺傷事件に背中を押され、連鎖的に事件に向かった可能性があるとみている。

受験生らが刺された東京大学試験会場の現場付近を調べる捜査員ら=15日午前、東京都文京区で

 逮捕当初の警視庁の調べに少年は「医者になるために東大を目指してきたが、約1年前から成績が上がらず、自信をなくしてしまった」と話し、あこがれる医師の存在も明かしていた。
 少年鑑別所で勤務経験のある出口保行・東京未来大教授(犯罪心理学)は「東大などの社会的な評価を意識しすぎて、罪を犯せば捕まるリスクと人生を台無しにするコストを考えることができなくなってしまったのではないか」と話す。その上で「小田急線や京王線の事件から自分にできそうなところを精査して犯行を組み立てており、かなり計画性が高い」と指摘した。
 一方、少年の変化や事件の予兆に周囲の人が気付かなかった背景には、人と人の接点が減った新型コロナウイルス禍の影響が大きいとし、「NPOなどの機関に気軽に相談できるような環境づくりが大事だ」と話した。
 警視庁によると、少年は15日午前8時半ごろ、東大前の路上で、男性(72)、受験生の女子高校生(17)、男子高校生(18)の背中を包丁で刺したとされる。男性は重傷で、高校生2人のけがは重くない。
 少年は包丁のほかに刃物2本、可燃性とみられる液体などを所持。事件直前に東京メトロ東大前駅構内に着火剤で火を付けるなどした疑いもあり、警視庁が関連を調べている。(山田雄之、佐藤大)

◆「成績が思うように上がらない」 

 学校関係者によると、逮捕された少年は昨年9月、クラス担任との面談で「成績が思うように上がらない。文系に転向した方がいいかもしれない」などと悩みを打ち明けていた。
 少年は高校の中でも成績上位の理系のクラスに所属。部活に所属していた時期もあったが数カ月で辞め、周囲に東大の医学部につながる「理科三類」への進学を目指すと公言していた。
 昨年9月の面談では、自分の成績が目標に追いついておらず、進路変更の必要性について自らクラス担任に相談。担任は具体的な目標を示して、「次のテストでこれくらいの成績になるように頑張ろう」と励ましたという。
 2カ月後の昨年11月のテストでは、少年の成績は振るわず、苦手科目の点数も上がっていなかった。ただ、3年に進級する今春以降も文系には変更せず、理系クラスの予定だった。

◆卒業文集に「競争に勝て」

 少年は、きょうだいが多い家庭の長男として名古屋市内の閑静な住宅街で育った。自宅近くの住民によると「両親は温厚で仲の良い家庭」という。
 同級生らによると、少年は中学生のころから成績上位者として知られるようになり、「東大を目指す」と話すように。この頃から既に大学入試対策の問題集を持ち歩いていたという。
 中学の卒業文集には「勉強」というタイトルの作文を掲載。「(勉強が)ときに自分を苦しめた」との記述がある一方、努力の原動力を「順位」「ライバル意識」と書いていた。将来の自分に向けた別の文章には「競争に勝て」「上に進む」といった言葉が並んでいた。
 高校に進学しても、成績上位のクラスに所属し、東大志望の同級生と行動をともにするように。自校の生徒であることへの誇りを頻繁に口にしていた。
 学校関係者は「東大に強いこだわりを持っていたが、最近は成績が伸びず、進路を巡って心が揺れていた」と話す。同級生の1人は「思い通りにいかないとかっとするところがあった。完璧主義だった」と話した。

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