「口ばかり」国内は分断、中ロとの対立は激化… 揺らぐ「民主主義陣営のリーダー」 米バイデン政権

2022年1月23日 15時30分
<バイデン政権 発足1年 ㊤>

19日、米ホワイトハウスでの記者会見で、質問を聞くバイデン大統領=AP

 「トランプ(前大統領)は中国に米国の製品を買わせた。バイデン(大統領)は、口ばかりで何もできていない」。米西部アリゾナ州で15日に開かれたトランプ前大統領の集会。参加した飲食店勤務のエドメンソンさん(42)は、中国に有効な手を打てていないとバイデン氏を厳しく批判した。
 米国第一主義を掲げたトランプ前政権は、貿易赤字を解消するため中国から輸入する製品の関税を次々と引き上げ、「貿易戦争」を仕掛けた。2020年2月には、米国が一部の関税を引き下げる代わりに中国が米国の農産品などの輸入を増やす「第1段階の合意」をのませた。

米西部アリゾナ州で15日、集会でバイデン大統領を激しく批判するトランプ前大統領=吉田通夫撮影

◆「国際協調」路線復帰の一方「中国包囲網」

 後を継いだバイデン政権は「米国は戻ってきた」と宣言し、気候変動の国際枠組み「パリ協定」への復帰や世界保健機関(WHO)からの脱退中止などを次々と決定。前政権が背を向けた国際協調路線への復帰を明確にした。
 対照的に、中国との対立は激化。人権や民主主義を重視する民主党の大統領らしく、少数民族ウイグル族への弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと問題視し、国家元首が強大な権力を握る「専制主義」「独裁国家」と批判を強めた。
 さらに日米など2国間の首脳会談、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」、米英豪3カ国の枠組み「AUKUS(オーカス)」など、さまざまな場で民主主義を軸とする同盟国の再結集を訴え、中国包囲網づくりを急ぐ。中国に頼らない半導体の調達など「経済安全保障」の強化も目指している。
 昨年12月には北京五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を公表。大統領選の公約通り、日本など約100カ国がオンラインで参加した「民主主義サミット」も開催し、「民主主義再生に向けた大統領構想」として改革指導者などへの資金支援も発表した。
 一方、中国外務省は同月まとめた報告書で「自国の民主主義の欠陥を無視し、民主の手本として他国の内政に干渉している」と米国内の分断をやゆ。求心力の弱まったバイデン政権を試すかのように、ロシアは隣国ウクライナに侵攻する構えを見せ、北朝鮮はミサイルを相次いで発射した。トランプ氏は「米国がもてあそばれている」とバイデン氏を攻撃し、分断を深める悪循環に陥っている。

◆国内の厳しい対立「克服難しい」

 国内外の分断と対立で身動きの取れないバイデン氏。米デューク大のレイチェル・マイリック助教授(政治学)は「米国内の激しい二極対立は克服が難しくなり、民主主義は米国も含めて世界的に衰退している」と指摘する。
 その上で、米国が国内の問題を率直に認め、他の悩める国々と共に歩むという姿勢なら「(自国の欠陥を放置しているという批判に対し)他の民主主義国を支援する努力を正当化できるし、さまざまな制度の改善にもつながるだろう」と語った。(ワシントン・吉田通夫)
 バイデン米大統領は1月20日に就任から1年を迎えました。民主主義の再生や融和を訴えつつも、国内外で直面する課題を2回にわたり探ります。

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