マイノリティー狙い撃ち 共和党多数派の州で相次ぐ投票制限法 トランプ氏の影響力、今なお強く

2022年1月23日 19時00分
<バイデン政権 発足1年 ㊦>

米ニューヨークで17日、投票権保護を訴える集会で気勢を上げる参加者ら。米南部諸州では実質的に黒人らの投票権を制限する立法が相次いでいる=杉藤貴浩撮影

 みぞれ降る灰色の空となった17日の米東部ニューヨーク。黒人が多く住むハーレム地区の集会所に100人を超す人々が集まった。
 この日は1960年代に黒人らの権利向上に尽くした公民権運動指導者キング牧師の誕生を記念する全米の祝日。だが、集会に参加した黒人女性ヤスミン・ダリアさん(29)は「キングが生きていたら、米国はまだ60年代なのかと絶望するだろう」と天を仰いだ。

◆期日前投票の短縮、投票所減らし、身分証明の厳格化…「狂気の沙汰」

 嘆きの理由は、南部などで不正防止を口実に、有権者の投票機会を制限する州法が相次いで成立していることだ。共和党が主導し、期日前投票の期間短縮や投票所の削減、郵便投票をする際の身分証明の厳格化などを定めている。
 立法化で投票が難しくなるのが、黒人やヒスパニック系といったマイノリティー(少数派)。長時間の現場労働者や、身分証明となる運転免許証などを持たない層が多いからだ。民主党の支持層を巧妙に切り崩す意図とみられ、ダリアさんは「狂気の沙汰だ」と批判した。ニューヨーク大ブレナン・センターによると、こうした州法が成立したのは昨年1年で19州に上る。
 背景には、2020年の大統領選でバイデン大統領に敗れながら「選挙が盗まれた」と根拠のない不正を主張し続けるトランプ前大統領の影響力がある。トランプ氏は15日に西部アリゾナ州で開いた集会でも、自身の支持者が起こした昨年1月6日の連邦議会襲撃事件で、自身の責任を認めるどころか「本当の反乱は(20年大統領選のあった)11月3日に起きた」と聴衆をあおった。

◆党派対立はワクチン接種、マスク着用義務にも波及

 就任以来、国民の融和を強調してきたバイデン氏も業を煮やし「前大統領とその仲間の目的は、彼らに反対票を投じる人々の権利を奪うことだ」などとトランプ氏を正面から強く非難するようになった。米シンクタンク・ブルッキングス研究所のニコル・ウィルコクソン非常勤研究員は「投票制限を巡る対立は、米国の分断の象徴的な例だ」と指摘する。
 党派対立は新型コロナウイルスワクチン接種やマスク着用義務にも及ぶ。共和党支持層はバイデン政権のコロナ対策に反発、感染拡大による物流の混乱などから物価の高騰にも拍車がかかっている。
 政権は投票権問題について、投票を容易にするための全米基準を設けるといった対抗策を盛り込んだ法案を推進したが、共和党に加え民主党の一部も離反し、成立は絶望的な状況だ。バイデン氏は19日「民主主義を支えるため、あらゆる手段を模索する」と表明したが打開の道は険しい。
 就任時は5割を超えた支持率が4割程度に低迷する中、11月には議会勢力が塗り変わる中間選挙を迎える。伝統的に与党に逆風が吹く厳しい戦いだ。ウィルコクソン研究員は「バイデン政権が公約の多くを達成できないとなれば、有権者の信頼を失い、ますます国政運営は困難になる」と強調した。(ニューヨーク・杉藤貴浩、写真も)

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