コロナ禍に絡め強まる緊急事態条項創設の改憲論 夏の参院選が焦点 憲法、岐路の1年に 

2022年1月24日 06時00分
 新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るう中で通常国会が始まり、自民党など改憲勢力から、コロナ禍に絡めて憲法に緊急事態条項を創設すべきだとの主張が強まっている。野党の日本維新の会や国民民主党も議論の加速を訴え、昨年末の臨時国会では予算審議中という異例の状況下で衆院憲法審査会が開かれた。今夏の参院選で改憲に前向きな勢力が衆参両院で発議に必要な3分の2を占める可能性があり、5月に施行75年を迎える憲法にとって、岐路といえる1年になる。(木谷孝洋)

◆首相「重要な論点だ」

 岸田文雄首相(自民党総裁)は20日の衆院代表質問で、緊急事態条項に関し「緊急事態において国会の権能をいかに維持するのかは重要な論点だ。与野党の枠を超えた積極的な議論を期待する」と表明した。
 自民党は、自衛隊の明記や教育の充実などの改憲4項目を、条文イメージとして取りまとめている。とりわけ強く打ち出すのが、大規模災害時に国会議員任期の特例延長などを認める緊急事態条項の創設だ。
 西村康稔・前経済再生担当相は昨年末の衆院憲法審で「緊急事態に国民を守るための規定を、憲法上に整備しておくことが必要だ」と指摘。安倍、菅両政権でコロナ対策の担当閣僚だった西村氏の発言からはコロナを名目に世論や他党の理解を得たい思惑が透ける。

◆野党第1党は慎重だが、議論加速の可能性

 野党第1党の立憲民主党は「改憲のための改憲論にくみするつもりはない」(小川淳也政調会長)との立場を強調し、共産党やれいわ新選組なども改憲には慎重な考え。ただ、昨年の衆院選で議席を伸ばした維新と国民は、自民に歩調を合わせている。
 維新の馬場伸幸共同代表は20日の衆院代表質問で「自民が示す緊急事態条項創設の党内議論を進めていく」と明言。国民の玉木雄一郎代表も「コロナ禍を受けた憲法上の課題として、大規模感染症や大規模災害が発生した場合、議員の任期を延長できる規定が必要だ」と訴えた。
 改憲勢力が勢いを増す中、昨年末の衆院憲法審は約4年ぶりに、参院での予算審議と並行して討議を行った。立民幹部は「あくまで例外」と予防線を張るが、今国会でも2022年度予算案の衆院通過後に憲法審の毎週開催を求める声が高まり、改憲論議が加速する可能性がある。

◆「黄金の3年」か、求心力低下か

 参院選の結果も、その後の改憲論議の行方を左右する。現在の衆院会派では自民、維新、国民に加え、緊急事態条項創設を否定しない公明党を合わせた議席数は347に達し、改憲発議に必要な3分の2(310議席)を上回る。
 参院会派別でも現状で3分の2(164議席)超の169議席を占める4党が、選挙後に再び3分の2以上を確保すれば、衆参両院で発議に向けた環境が整う。首相は、衆院を解散しなければ25年まで国政選挙がない「黄金の3年」を手に入れ、改憲が現実味を増しそうだ。
 逆に自民が議席を減らすなどして3分の2を割り込めば、首相の求心力低下につながり改憲論議は遠のく。参院自民党幹部は参院選を「政権の命運がかかる選挙」と位置づける。

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