未来のための1着 渋谷ショップオーナーの挑戦! 人にも地球にも優しくしたい 

2022年1月24日 07時05分

色とりどりの服が並ぶ渋谷スクランブルスクエアのEnter the E 

 作る人や環境に配慮した服だけを集めたい−。人権問題や衣料廃棄など多くの課題を抱えるファッション業界で、こう決意したセレクトショップが渋谷にある。その名は「Enter(エンター) the(ジ) E(イー)」。買い付けから販売までを1人でこなす社長の植月友美さんは「10着のうち1着でもサステナブルに」を掲げ、地球と人が共存できる服を広げようとしている。
 店は渋谷駅前の商業施設「渋谷スクランブルスクエア」内にある。店内に並ぶカラフルな服は、デザイン性の高いものから普段使いできるものまで多岐にわたる。

店を立ち上げた思いを語る植月友美さん

 一見ダウン風の植物柄のジャケットは、廃棄されたペットボトルから生まれた。雨風でも問題ない暖かさと軽さが特徴。夏にぴったりのワンピースは廃棄予定だった余剰生地から作られているという。植月さんは「こうした服を買える店はまだまだ少ない。環境に配慮した服を着たいと思った人が気軽にアクセスできるように取りそろえている」と説明する。
 扱うのは欧州や北米を中心にした三十五ブランド約千点。「農薬を使わず環境や生産者の健康を配慮した材料を使っているか」「職人や工場で働く人の人権が守られているか」など植月さんが定めた六つの基準で選定。ブランド創設者やデザイナーを訪ねて取材し、その目で確かめている。

余剰生地で作られたワンピース

 オンラインストアや実店舗の他に力を入れるのは、毎週木曜のオンライン受注会。YouTubeのライブ配信で、取材した内容を発信し、素材や製造過程へのこだわり、着こなし方を紹介する。「作る人と着る人の距離を縮めたい。同じ服も背景を知れば違って見えて、大切に着るようになるはずです」
 杉並区出身。祖父が洋品店を営み、母も洋裁好きだった影響で、気付けば服が好きだった。高校卒業後、古着のバイヤーなどを経て、カナダ・トロントに留学。ファッションのマネジメントを学び、ニューヨークの洋品店に勤務していたが、大病を患い帰国した。

リサイクルウールとペットボトルでできたコート

 その後、ファッション関係の小売り大手に入社したものの、仕事のストレスなどから、洋服に大金をつぎこみ約五百万円の借金をした。「その時初めて、自分のためだけに生きるとむなしいと感じた。今度は誰かのために生きてから死にたいという気持ちがわいた」と振り返る。
 服を使って社会貢献する方法を探し始めると、業界が抱える環境や人権問題に直面した。「大好きなものが、誰かを苦しめている可能性がある」。ショックは大きかった。それでも服が大好きな気持ちは消えない。だからこそ、誰にも迷惑をかけずに服を楽しめる社会をつくりたいと考えるようになった。

ペットボトルからできたジャケット

 模索を続ける中で気づいたのは、国内で環境や人に配慮した服を買える場所が少ないことだ。そうして三年前に立ち上げたのが、「Enter the E」だ。「E」にはEarth(地球)やEnvironment(環境)などの意味を込めた。
 「服もある種の生き物で大切にするべきだ。自分だけが楽しいファッションってもう面白くない。自分もみんなも心地よい選び方や使い方がいいです」と植月さん。将来は服のリサイクル工場も作りたいという夢がある。挑戦は始まったばかりだ。
 ※店の情報はこちらから
文・山下葉月/写真・池田まみ
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