萩原朔太郎の「月に吠える」 初版無削除版、前橋文学館にて無料公開 29日から 「表現の自由 考える契機」

2022年1月24日 07時32分

「月に吠える」の初版無削除版

 前橋市出身の詩人、萩原朔太郎(一八八六〜一九四二年)の代表作「月に吠(ほ)える」のうち、検閲によって一部削除となる前の希少な「初版無削除版」が研究者から同市千代田町の前橋文学館に寄贈され、二十九日〜二月五日に無料公開される。朔太郎の孫で、自身も映像作家という表現者の萩原朔美館長は「現代の今、削除の事実を知ってもらい、表現の自由と言葉について考える契機にしてほしい」と呼び掛けている。(菅原洋)
 同館によると、朔太郎の第一詩集「月に吠える」の初版は大正六(一九一七)年に出版された。しかし、収録した「愛憐(あいれん)」と「恋を恋する人」の二篇(へん)が旧内務省から「風俗壊乱」として発売禁止を内達され、その計六ページを削除する形で発売が許可された。
 初版約五百部のうち、無削除版が何冊あったのかは分かっていない。ただ現在は約十冊が確認され、中には関係者に贈った本も含まれるという。
 朔太郎によると、この二篇は「典雅な耽美(たんび)的の抒情(じょじょう)詩」。検閲について「かやうな詩篇が風俗を壊乱するといふのなら、古来のあらゆる抒情詩の中でいやしくも恋愛に関するものは悉(ことごと)く禁止されなければならない筈(はず)」と不快感を示した。朔美館長は「朔太郎は表現がねじ曲げられて解釈されたと感じた」とみている。

削除されたページの一部。資料保存のために本は全開できない(いずれも前橋文学館提供)

 同館によると、初版無削除版は収集家などに高額で取引され、市立の同館は所蔵できなかった。こうした事情を知った秀明大(千葉県)の川島幸希(こうき)学長(日本近代文学)が昨年末、母親が前橋女子高で学んだという縁もあって寄贈してくれたという。
 朔美館長は「文学館に(初版無削除版が)ないのは寂しかった。本当にうれしい。一つだけの重要なピースが最後にはまった」と感激している。
 初版無削除版は本が傷むために全開できないが、削除した一部が見えるように開き、関連資料とともに約十点を展示する。水曜休館。新型コロナウイルスの感染対策を含め、問い合わせは同館=電027(235)8011=へ。

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