副業に農業 高まる関心 農家とつながるアプリ、登録者増 変わる働き方 担い手期待

2022年1月24日 10時09分

農家の杉山和広さん(左)に機材の購入などについて相談する男性=三重県四日市市で

 副業として農業に関心を持つ人が増えている。背景には、多様な働き方を掲げて国が副業を推進していることに加え、新型コロナウイルスの影響で出勤の必要がなくなったり、収入が減ったりした人が少なくないことがある。農家の高齢化やコロナ禍による外国人技能実習生の入国規制で、現場は人手不足が加速。新たな担い手確保につながるのではないかと期待が高まっている。 (熊崎未奈)
 三重県菰野町の会社員男性(20)は昨年十月から、農家だった祖父が所有する広さ約十アールの農地でチンゲンサイを栽培し始めた。きっかけは同一月と七月、同県四日市市の「すぎやまファーム」で、ニンジンの収穫や出荷を手伝った経験だ。
 普段は半導体関連の工場に勤務するが、いつかは専業農家になりたいと夢見ている。「まずは副業で体験してみよう」と考え、人手を必要とする農家とやりとりできるスマートフォンのアプリ「農mers(ノウマーズ)」に登録し、ファームとつながった。
 ファームでは、中心になって作業を担っていた親族が高齢になって働き手が不足。ニンジンの出荷は泥を洗い流したり、計量して箱詰めしたりと手間がかかる。代表の杉山和広さん(43)は「若い人は体力もあるし、のみ込みも早い。アプリで手軽に募集できるのはありがたい」と喜ぶ。
 時給九百円で一日四〜七時間。計四日間だったが、機械の使い方や作業の流れが分かり「いい経験になった」と自信を深めた男性。杉山さんとの交流は続き、将来を見据え、機材の購入や出荷先などについて相談している。「このまま農業を続けてくれれば」と杉山さんも期待する。
 農mersは就職情報大手マイナビが運営し、二〇一九年九月から運用を始めた。背景には高齢化による深刻な担い手不足がある。農林水産省の農林業センサスによると、農業を主な仕事とする人は二〇年、全国で百三十六万人。前回調査時の一五年から三十九万人も減った。コロナ禍で入国が厳しくなり、農業分野の外国人実習生が減ったことも拍車を掛けている。
 一方で、農mersに登録する働き手は二〇年一月の約千三百人に対し、昨年十二月には一万六千二百人と十倍以上に増えた。うち約四割を二十〜三十代が占める。マイナビの担当者はインターネットを通じて単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」が増えたこと、コロナ禍でテレワークが普及して場所を選ばない働き方が広まったことが大きいと分析する。二〇年七月に登録者三百十三人に複数回答で聞いたところ、「自然に囲まれて仕事がしたい」が55%で最多だった。
 コロナ禍で仕事が減った業界と連携し、農業の労働力を確保しようという動きもある。全国農業協同組合連合会(JA全農)は昨年四月、旅行大手のJTBと協定を締結。宿泊施設や飲食店などJTBの取引先の従業員が、人手の足りない農家で短期間、働ける仕組みを作った。これまでに九道県で実施され、それぞれ野菜の収穫や出荷作業に当たった。JA全農の担当者は「単なる労働力の確保ではなく、将来的には新規就農につなげたい」と話す。
 農業経営に詳しい東京農業大の堀田和彦教授は「いきなり専業農家を増やすのはハードルが高く、副業をへて農業に参入する人が増えるのはいい」と話す。その上で「新規就農につなげるには、受け入れる農家や地域が、定住に向けた環境整備を積極的にできるかにかかっている」と指摘している。

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