<社説>核禁条約1年 日本への期待裏切るな

2022年1月25日 06時55分
 核兵器を全面的に禁じる核兵器禁止条約の発効から二十二日で一年がたち、国内各地で記念行事が行われた。唯一の戦争被爆国である日本には条約に参加し、核廃絶に寄与するよう求める声が相次ぐ。国際社会の期待を裏切ってはならない。
 核兵器の非人道性に焦点を当てて、製造や保有、使用などを幅広く禁止して違法化する核禁条約は核兵器の存在を前提とする核拡散防止条約(NPT)や、包括的核実験禁止条約(CTBT)など既存の枠組みとは全く異なる。
 核保有国や核の傘に入っている国々は、核禁条約を「非現実的で役に立たない」として、冷ややかな姿勢を変えていない。
 ただ発効後の一年間で、世界のうねりはさらに大きくなった。条約批准国・地域は五十九に増加。日本では六百以上の自治体が、日本政府に対して核禁条約への参加を求める意見書を決議した。
 オランダの非政府組織(NGO)の調査によると、条約発効をきっかけに、世界の金融機関が核兵器関連企業への投融資を大幅に制限しているという。
 注目すべきは、日本同様、米国の「核の傘」の下にあるドイツが昨年暮れ、圧力を受けながらも、核禁条約の締約国会議へのオブザーバー参加を表明したことだ。
 核保有国も参加するNPT再検討会議は、コロナ禍で再三延期されており、三月に予定される締約国会議は重要性を増している。
 日本はなぜオブザーバー参加もできないのか、説得力ある理由は見当たらない。むしろ被爆国として得た知見を会議の場で世界に伝える責務があるのではないか。
 岸田文雄首相は被爆地・広島県選出でありながら、オブザーバー参加にすら消極的だ。その代わり「国際賢人会議」を組織して広島で開催するという。世界の政治指導者に広島、長崎への訪問も呼びかけているが、それだけで停滞する核廃絶が前進するか疑問だ。
 日本政府は「核なき世界」実現に向け、あらゆる機会を生かす必要がある。首相は条約参加を求める声に耳を傾け、せめてオブザーバー参加を決断すべきである。

関連キーワード


おすすめ情報