<社説>名護市長再選 「辺野古容認」は早計だ

2022年1月25日 06時55分
 沖縄県名護市長選は、自民、公明両党が推薦する現職、渡具知武豊氏が再選を果たした。同市辺野古での米軍新基地建設中止を求める玉城デニー知事は野党系新人の岸本洋平氏を推したが、渡具知氏は一貫して賛否を明らかにせず、民意が「辺野古容認」を示したと受け止めるのは早計だ。
 渡具知氏は選挙戦で、政府から交付された米軍再編交付金を財源に子育て支援策を充実させたことなどの四年間の実績を訴えた。
 交付金は自治体首長が米軍再編事業に「一定の理解」を示したと防衛相が判断すれば交付される。渡具知氏は初当選後に始まった辺野古沿岸部への土砂投入に異を唱えておらず、国は一定の理解を得たと判断しているのだろう。
 しかし、渡具知氏は初当選時から米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設に向けた辺野古での新基地建設について「国と県の係争の推移を見守る」とし、今回の市長選でも賛否を明らかにしなかった。
 岸本氏は玉城知事と足並みをそろえ、移設阻止が最大の争点だと訴えたが、辺野古の是非が主要争点だったとは言い難い。
 むしろ、市民は新型コロナウイルスの感染拡大で傷ついた経済の立て直しや、教育・福祉政策の継続を望んだのだろう。関心を基地よりも暮らしに向けざるを得ない苦しい状況がうかがえる。
 名護市は一九九六年、日米両政府が普天間返還に合意して以降、代替施設の建設候補地とされ、市長選などの選挙で新基地建設の是非が問われ続けた。そのたびに市民は分断され、「選挙疲れ」の状態にあるのかもしれない。
 二〇一九年の県民投票では、名護市の投票者の73%が辺野古埋め立てに反対票を投じた。政府がそうした民意を顧みず、巨額の財政措置をてこに、安全保障の根幹に関わる重要施設の受け入れを迫る手法はとても妥当とは言えない。
 今年、沖縄は本土復帰から五十年の節目に当たる。今秋の知事選をはじめ、県内の自治体選挙では復帰後も長らく「基地か経済か」が問われ続けてきた。そうした状況に追い込んだ責任は、安全保障の負担の多くを沖縄県民に強いてきた本土に住む私たちにもある。
 政府には、市長選結果を辺野古容認と受け止めず、計画をいったん白紙に戻して、代替施設建設とは切り離した普天間返還を米側に提起するよう重ねて求めたい。

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