<社説>長期収容で提訴 入管の強圧性が争点だ

2022年1月26日 07時53分
 司法審査もなく、長期収容されたのは国際人権規約に反するとして、外国人二人が国に計三千万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。日本の入管行政は国際基準から逸脱していると指摘される。司法判断に注目したい。
 原告は母国での迫害を逃れて来日したイラン国籍とトルコ国籍の男性二人。ともに難民申請が認められず、仮放免と再収容が十年以上、繰り返されてきた。トルコ国籍の男性には日本人の妻がいる。
 この訴えには経緯がある。二人は二〇一九年、日本も理事国を務める国連人権理事会の恣意(しい)的拘禁作業部会に「収容は人権侵害」と通報した。同作業部会は二〇年、再収容に必要性は認められず、収容期間の上限や収容判断に司法の関与がない日本の入管難民法は国際人権規約に反すると、政府に同法の見直しや二人への賠償を求める意見書を送付した。
 国際人権規約は世界人権宣言に基づく条約で、日本も批准している。意見書に法的な拘束力はないが、国際常識に照らした批判だ。
 だが、政府は昨年三月、作業部会に「(意見書は)事実誤認に基づく」と異議を申し立てた。具体的には入管の収容判断に不服がある者は行政訴訟を起こすことが可能で、司法審査や救済は保障されているなどと反論。提訴により、論戦が法廷に持ち込まれた形だ。
 警察や検察でも身体拘束するためには裁判所の令状が必要だが、入管は独自判断で拘束できる。その特殊性を意見書は問題視しているのであって、政府の反論は当を得ているとは言い難い。
 さらに昨年九月に入管の対応を違憲と断じた東京高裁判決は決定的だ。難民不認定に異議を申し立てた外国人に棄却を告げた翌日、強制送還したことが「裁判を受ける権利への侵害」と判断された。判決は司法による救済が看板倒れだったことを示したといえる。
 政府は難民申請を二回に制限することなどを盛り込んだ入管難民法改正案の再提出を準備している。入管の審査回数すら制限することが、東京高裁判決の趣旨に逆行していることは明らかだ。
 岸田文雄首相は国際人権担当の首相補佐官を新設したが、まずは足元の人権感覚が問われよう。
 行政に強圧性を自覚する能力が欠けていれば、司法の力に頼らざるを得ない。裁判所には国際世論にも配慮した判断を期待したい。

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