環境のための「ちょい肉断ち」が英国で浸透 チャールズ皇太子も実践 ビーガンの意識高い若者

2022年1月26日 12時00分
 地球温暖化防止のために肉食を控えよう―。英国で近年、そんな意識が広がりを見せている。背景には牛や羊がげっぷとして出すメタンや、牧草地づくりのための森林伐採の影響がある。昨年、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国も務めた英国。著名人の提唱も相まって、肉や卵を使わない「ビーガン」メニューが食の選択肢として浸透している。(ロンドン・加藤美喜、写真も)

ロンドン市内で10日、「人々は食と環境の関係にどんどん敏感になっている」と話すビーガンケバブ店経営者イルディスさん

◆調味料と焼き加減で本物感

 「ほら、味も食感も本物と変わらないでしょう」。ロンドンの原宿とも言われる若者の街カムデン。ビーガンケバブの先駆けとなった「ワッタピタ」の経営者ジェム・イルディスさん(33)が、自慢の一品を試食させてくれた。確かにかみ応えや風味はほぼ肉だ。大豆素材に企業秘密の調味料を加え、焼き加減などで本物感を出しているという。
 開業は5年前。物珍しさや健康志向ですぐに話題を呼び、何よりもおいしさが好評に。2020年にはビーガンの店で初めて、ロンドンのベストケバブ賞(持ち帰り部門)も受賞した。今はライバルが増えたが、大豆以外の素材も視野に工夫を重ねる。ビーガンの商品開発は「創造性が発揮できる」と魅力を語る。

ビーガンで初めてロンドンのベストケバブ賞に輝いた「ワッタピタ」のケバブ=同店提供

 ビーガンはベジタリアンより厳格で、牛乳や卵も食べない完全菜食主義者と定義される。宗教上の理由の人もいるが、イルディスさんは「客の半数以上はビーガンというより、肉食を少しでも減らしたい人たち。近年は温暖化の影響が間違いなくある。特に若い世代は食と環境の関係に関心が高い」と話す。

◆牛や羊のげっぷ、牧草地のための森林伐採を問題視

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は19年の特別報告書で、肉・乳製品の高い消費量が温暖化に影響していると指摘。肉食を減らすことを推奨した。家畜の中でも、特に牛と羊は胃袋が4つある反芻はんすう動物で、温室効果ガスのメタンを多く排出する。加えて、牧草地を作る際の森林伐採に伴う二酸化炭素(CO2)の増加などが問題視されている。
 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(19)はビーガンを公言している。しかし、多くの人にとって肉はなかなか断ち難い。英国では元ビートルズのポール・マッカートニーさん(79)が09年、いち早く家畜と温暖化の関係を訴え、「ミートフリーマンデー(MFM、月曜日だけ肉を食べない)」運動を提唱した。
 週1なら気軽にできると賛同する人が増え、ロンドン本部によれば英国で3000校以上の学校が採用し、数十万人が実践している。各国にも広がり、日本の内閣府の食堂などでも導入された。
 MFMのサイトによると、週1回の肉断ちを1年間続けると、車で約700キロメートル移動する分の温室効果ガスが削減されるという。こうした緩い制限は英国のチャールズ皇太子やCOP26のシャルマ議長も実践している。

英ブライトンで23日、週末でにぎわうビーガンマーケット

◆ビーガン市場は1000億円規模、さらに拡大へ

 ロンドン近郊では現在、毎週のようにビーガンマーケットが開かれ、飲食店には大抵ビーガンのメニューがある。1月(January)を「ビガニュアリー」と呼んで新年の抱負で肉を減らそうという運動も広がりを見せる。英国の市場規模は日本円で1000億円以上との試算もあり、将来はさらに伸びるとみられる。

15日、ロンドン郊外のビーガンマーケットに並んだ創意工夫あふれるビーガンバーガー

 新型コロナウイルス禍で肉食をやめたという若者も。ロンドンの会社員エイミー・スミスさん(27)は20年の都市封鎖中、自炊で肉を多く食べていたが、英国の著名な動物学者デービッド・アッテンボロー氏(95)による大規模畜産業と環境破壊のドキュメンタリーを見て意識が変わったという。「地球を救うのは結局小さなことの積み重ね。私一人の行動がいかに重要かを実感した」と話した。

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