コロナ禍で全員が1年留年…クーデターで復学控えも 学校に通えないミャンマーの子どもたちに危機感

2022年1月26日 12時00分
ミャンマーの教育について話す国際開発センターの牟田博光理事長=東京都港区赤坂のアジア会館で

ミャンマーの教育について話す国際開発センターの牟田博光理事長=東京都港区赤坂のアジア会館で

 国軍によるクーデターから間もなく1年となるミャンマーで、多くの子どもたちが学校へ通えない状況が続いている。新型コロナウイルスの感染拡大に加え、市民の間に国軍統治下の学校で子どもたちを学ばせたくないとの思いがあるためだ。国際協力分野の調査・分析を行う一般財団法人「国際開発センター」理事長で、ミャンマー教育省の政策顧問を務める牟田博光氏は「一番の被害者は子どもたちだ」と危機感を強めている。(藤川大樹)

◆通学できている公立児童・生徒は35%程度か

 ミャンマーの学校は毎年6月1日に新学期が始まり、翌年の3月末でその学年が修了する。ただ、2020年度(20年6月~21年3月)は新型コロナの影響で、学校はほぼ1年間休校となり、全ての児童・生徒は留年となった。
 クーデターで実権を握った国軍は昨年6月に学校を再開したが、全員は復学していない。国軍側の発表によると、教科書を受け取るなどの手続きをした児童・生徒は昨年11月時点で約470万人。このうち実際に通学しているのは約330万人にとどまる。
 牟田氏は、19年度(19年6月~20年3月)のデータを基に「私立学校と、宗教省所管のモナスティック学校(僧院学校)を除く公立の小中高の児童・生徒数はおよそ900万人。21年度に学校に登録した児童・生徒はほぼ半数で、通学しているのは35%程度だろう」と推測する。

◆12万人の教師が国軍に不服従で処分

 クーデター後、多くの教師が市民不服従運動(CDM)に参加し、全教師の3割程度に相当する約12万人が処分された。現地では、学校への通学を国軍支援と見なす向きがあり、牟田氏は「CDMの対象となっていない私学の児童・生徒数が増えていると聞く。お金を持っている子どもは私学へ通えるが、そうではない子どもは勉強できないという状況は問題だ」と顔をしかめる。
 国軍は教壇を去った教師の穴を埋めるため大学卒業者を対象に日払いの教師を採用しているが、大学で教職課程を専攻していない人も多いとみられ、教育の質の低下が懸念されている。

◆環境、金銭…オンライン授業でも格差、対策必要

 クーデター前の国民民主連盟(NLD)政権や、クーデター後に民主派が立ち上げた挙国一致政府(NUG)はオンライン授業の導入を模索した。ただ、ミャンマーで電気のある学校は全体の34.85%にすぎず、スマートフォンでは通信料がかかるため、牟田氏は「オンライン家庭学習と言ってもなかなか難しいのが現状だ」と指摘。少数民族地域ではビルマ語を使わない家庭もあり、家庭学習のネックになっているという。
 牟田氏は、コロナ禍やクーデターで学校に行けなかった子どもたちを救うため将来的には「検定制度」の拡充が必要だと考えており、「学年ごとに検定試験を行い、学力に応じて編入を認めるようにするべきではないか」と提案した。

 むた・ひろみつ 東京工大名誉教授。専門は教育開発や政府開発援助(ODA)の評価など。2014年からミャンマー教育省政策顧問。

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