<社説>春闘スタート 賃金を上昇させてこそ

2022年1月27日 07時35分
 二〇二二年の春闘が始まった。今回の最大のテーマは賃上げであることは指摘するまでもない。コロナ禍が続き、状況は厳しいが、賃金上昇の流れを確実にするための実りある交渉を求めたい。
 春闘の事実上の主役である連合の芳野友子会長と経団連の十倉雅和会長は二十六日の会談で賃上げの重要性で一致した。この席で十倉会長は好業績企業のベースアップ(ベア)も視野に入れ「企業の責務として賃金引き上げと総合的な処遇改善に取り組むことが極めて重要だ」と述べた。 
 基本給自体を底上げするベアに経営側が前向きな姿勢を示したことで、定期昇給も含めた賃上げの勢いは強さを増し始めたといえる。岸田政権が3%超の賃上げを経済界に求めていることも経営側の姿勢を後押ししたに違いない。
 昨年九月に財務省が公表した二〇年度の法人企業統計によると、貸借対照表に利益剰余金として計上される企業の内部留保は、四百八十四兆円超と九年連続で過去最高を更新した。業績面で利益を伸ばす企業も増えており、賃上げの原資は十分にあるはずだ。
 心配なのは物価の上昇だ。ガソリンや公共料金だけでなく生活に直結した商品全体が値上がりしている。賃上げ率が物価上昇率を下回れば暮らしは苦しさを増し労働者にとって春闘は敗北となる。
 安倍政権以降、国が賃上げを促し、経営側が時に渋々応じるという異例の事態が断続的に起きてきた。今春闘こそ、組合側は例年にない積極姿勢で交渉に臨み大幅な賃上げを勝ち取ってほしい。
 会談では中小企業が不利にならないよう取引価格の適正化を図ることでも労使が一致した。この流れを受け、中小企業の社員や非正規労働者全体の待遇改善を一層図る努力も必要だ。
 芳野会長は中小企業で組織する組合の出身だ。格差を是正するには立場の弱い働き手への手厚い配慮が欠かせない。連合は傘下団体だけでなく、すべての労働者の利益を意識して交渉すべきだ。
 格差の拡大は雇用の調整弁として非正規労働者が使われたことが大きく作用している。目先の利益にとらわれ雇用の質を落としてきた経営者には猛省を促したい。
 今年の春闘が、正社員として働き適正な賃金を得る当たり前の社会を復活させる起点となることを期待したい。

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