重い障害児と家族の日常 命の喜びかみ締めて ドキュメンタリー映画「帆花」

2022年1月27日 10時18分
 生後すぐに「脳死に近い状態」と告げられた西村帆花(ほのか)さん(14)。人工呼吸器やたんの吸引などの医療的ケアを受けながら、さいたま市の自宅で両親と暮らしている。「帆花がいること自体が喜び。生活は幸せに満ちている」と母親の理佐さん(45)。そんな家族の日常を描いたドキュメンタリー映画「帆花」が、全国で順次公開されている。 (佐橋大)

現在の西村帆花さん(左)と理佐さん(西村家提供)

 今月中旬、理佐さんがオンラインで取材に答えてくれた。画面に映る理佐さんの後ろで、人工呼吸器を付けた帆花さんが横になっている。ベッドの周りにはたくさんのぬいぐるみも。ヘルパーがせわしなく帆花さんのたんを吸引したり、体を拭いたりする。吸引は多いときで約十分おきに必要という。
 「一日は、あっという間。その間に、帆花はサチュレーション(血中の酸素飽和度)のアラームを鳴らしたり、表情を変えたりして、いろいろなことを伝えてくれる。お互いに分かり合おうとするコミュニケーションの広がりが楽しい」。理佐さんはほほ笑む。
 帆花さんは生後九カ月から自宅で生活してきた。現在は障害福祉サービスにより、三人のヘルパーが交代で週に約四十時間、帆花さんのケアに対応。残りの百二十時間以上は、理佐さんと夫の秀勝さん(45)が分担している。週三日は帆花さんが在籍する特別支援学校の先生が訪れ、一回百分の授業を実施。別の場所で訪問教育を受けている友達とオンラインを通して一緒に学習することも。帆花さんは週二回の訪問入浴サービスや、体を動かすリハビリも受けている。
 厚生労働省によると、日常的にたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもは推計約二万人。昨年九月に親の負担を減らすため、医療的ケア児が通う学校に看護師を置くことなどを自治体などの責務とする医療的ケア児支援法が施行された。
 しかし、帆花さんのような重い障害児のケアは誰でも簡単にできるわけではなく、ヘルパーや看護師など支える担い手が不足している。帆花さんの場合、熟練したヘルパーでないと、帆花さんが求めることが正しく理解できず、逆に体調を崩してしまうこともある。そのため、短期入所など施設でのサービスは使えない状態という。
 「医療的ケアが必要な子も一人一人違う。その子がどう生きていくかという子ども側の視点で考えて、ケアに関わってくれる人が増えてほしい」と理佐さん。「帆花も一人の子ども。自分の望む生き方を普通に選べ、実現できるような世の中になればいい」と願う。

映画の一場面から、幼い頃の帆花さん ©JyaJya Films+roa film

 映画では、帆花さんが三歳の時から特別支援学校小学部に入学するまでの家族の歩みが映し出される。両親は、言葉を発しない帆花さんの表情などから“思い”を感じ取り、帆花さんを喜ばせたいとプレゼントを買い、動物園に連れて行き、誕生日を祝う。
 理佐さんは「帆花がいてくれることで生まれる出会い、さまざまな経験を共有できる喜びもある。『いのちがある』ということのありがたさを常に感じ、ささやかな幸せを毎日かみ締めている」と話す。
 映画「帆花」は72分で、東京都中野区のポレポレ東中野で上映中。名古屋市千種区の名古屋シネマテークでは2月5〜11日に公開予定。その他の上映スケジュールは映画の公式サイトへ。

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