「哲学の建築家」白井晟一の名作、残したい 旧松井田町役場 老朽化進み、存続は不透明

2022年1月28日 07時12分

白井晟一が設計した旧松井田町役場=安中市松井田町で、2021年12月撮影

 群馬県安中市の旧松井田町役場や、渋谷区立松濤(しょうとう)美術館(東京)など名建築の設計を手掛けた建築家、白井晟一(せいいち)(1905〜83年)。同館は30日まで白井の回顧展を開催するなど注目が集まる一方、役場は老朽化が進んで存続は不透明だ。県内の建築家有志からは保存への契機を高めようとする声も出始めている。(池田知之)
 京都生まれの白井は旧京都高等工芸学校を卒業後、ドイツで建築や哲学を学び、三〇年代から活躍。住宅や公共・商業建築など幅広く担当し、独特な作風から「哲学の建築家」と呼ばれた。県内では、前橋市の書店「煥乎堂(かんこどう)」の現存しない旧店舗などを設計した。
 五五(昭和三十)年完成の旧松井田町役場は傑作の一つ。安中市によると、鉄筋コンクリート二階建てで、延べ床千二百九十平方メートル。白亜の外観で「畑の中のパルテノン」と呼ばれたという。
 九二年まで役場として使い、二〇一七年までは公民館や文化財資料室などとして活用した。現在は天井や壁が剥がれるなどして危険なため閉鎖中。市は保存するか解体するかを含め、将来像は白紙としている。
 日本建築家協会(東京)に所属する県内の建築家からは「保存を」との声が出ている。市内の建築家久保田和人さん(59)は「建物としては安全に使うのは難しいが、味わいのある名作。残したい」と話す。
 前橋市の建築家上原和彦さん(57)によると、同協会員の建築家から保存の資金調達案として「クラウドファンディング(CF)の活用」「建築に理解のある資産家からの支援」などの声も出ている。上原さんは「建物の裏側を解体し、特徴的な正面部分だけを残す案もある」と指摘する。
 町役場周辺の街道筋は、古い木造建築が軒を連ね宿場町の雰囲気が残り、入り母屋風の屋根を載せた洋風建築「帝冠様式」の松井田商工会館(一九三九年完成)もある。久保田さんは「白井建築や歴史を生かせば地域の観光にもつながる」と語る。
 伊勢崎市の建築家永井福二さん(57)は「役場に勤務していたなど思い入れのある人を呼ぶシンポジウムを日本建築家協会主催で開催し、保存への意識を盛り上げられれば」と期待する。
 松濤美術館は同館の建物そのものを作品として紹介する「白井晟一入門 Back to 1981 建物公開」展を開催中。詳細は同館ホームページへ。

白井の晩年の代表作として知られる渋谷区立松濤美術館=東京都渋谷区で


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