市議会傍聴「見える化」 取手、全方位カメラで中継 障害者団体要望で設置

2022年1月29日 07時50分
 取手市議会が、周囲360度を映せる全方位カメラを使ったインターネット中継に乗り出した。傍聴に足を運ぶのが難しい車いす利用の障害者らの声に応えたもので、固定カメラでは分からない議員一人一人の表情などを見ることが可能に。一方、水戸市議会では傍聴席から議員の姿がほとんど見えないとして、市民から改善を求める声が上がっている。(林容史、保坂千裕)

委員会室の中央に設置された全方位カメラ

 取手市議会で二十五日に開かれた議会運営委員会。委員会室中央の全方位カメラを通して、審議の様子がインターネット中継された。市民らは、手元のパソコンやタブレットの操作で、室内をぐるりと見渡すことができる。
 市内の約三十の障害者団体などでつくる「とりで障害者協働支援ネットワーク」が二〇一八年、福祉厚生委員会で議会棟のバリアフリー化について意見聴取を受けた際、従来の固定カメラによる中継では「傍聴とは言い難い。視聴者の意思で見たい場所を見ることができない」と指摘。議会事務局で検討し、全方位カメラの設置を決めた。
 この日の議運委には、ネットワークのメンバー三人が出席。代表の染野和成(かずしげ)さん(69)は「遠隔操作で好きなところを見られるのは素晴らしい」と評価した。

タブレットを操作すれば好きな方向を映すことができる=いずれも取手市議会で

 ただ、車いす利用者がネット中継ではなく直に議会審議を聴くには、まだ高いハードルがある。本会議場のある議会棟の二階まで行けるエレベーターはなく、傍聴席に入るにも十段の急な階段を上らなければならないからだ。
 染野さんは「最終的な目的は誰もが議場で傍聴できること」とくぎを刺し、「福祉のまちづくりなど、自分に関わる議案がどう審議されるのか、議員が何を発言するのか、直接聞きたい」と訴えた。
 議運委の岩沢信委員長は「全議員の表情が市民に見えることで、審議に緊張感が生まれる」と歓迎。市議会は今後、全ての常任・特別委員会を全方位カメラで中継するとともに、本会議場への導入も探る。

◆水戸 見えぬ議員 市民「改善を」

傍聴席の最前列から見た本会議場。議員席はほぼ死角になっている=水戸市議会で

 水戸市議会では本会議場の構造上、傍聴席から議員の姿がほとんど見えない。「市民代表」たちの議論を聴きに時々足を運ぶという市内の主婦滝田美佳さん(68)は「知る権利を奪われている。税金で建てた庁舎であり、改善してもらいたい」と不満を口にする。
 本会議場は、二〇一八年に完成した市役所本庁舎の七〜八階。議会事務局によると、議員席が死角になっている現在の構造は、東日本大震災で被災した旧庁舎を建て替える間に議場を置いていたプレハブ庁舎の「教訓」によるものだ。
 プレハブ庁舎時代は議場と傍聴席の入り口が同じ階だったため、本会議終了後に議員と傍聴者が鉢合わせし、議案の採決結果などを巡るトラブルが発生したこともある。そこで、新庁舎の設計に当たっては「議員が採決で余計なことを考えないように」(事務局の担当者)、入り口を別の階に。その結果、現在の構造になったという。
 ただ、ある市議経験者は、旧庁舎時代にも議場と傍聴席との仕切りを、議員からの要望で約五十センチ高くしたことがあったと証言。「インターネットで議会中継も見られる時代にわざわざ傍聴に来るのは、議員の行動を見るため。なぜ水戸市だけこうなっているのか」と疑問を呈する。
 市民オンブズマンいばらきの大矢尚武(しょうぶ)代表=結城市=は「傍聴者は、議員がどのような姿勢で審議に臨んでいるのかも見ている。議員の姿が見えないのでは、非開放的な議会運営がなされていると評価せざるを得ない」と指摘する。

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