線路への突き落としやアジア系住民を狙ったヘイトクライム… アメリカ大都市で治安悪化 

2022年1月29日 18時17分
 【ニューヨーク=杉藤貴浩】長引く新型コロナウイルス禍などの影響で、米都市部の治安が悪化を続けている。最大都市の東部ニューヨークでは、昨年の地下鉄内での暴力事件数が2000年以降、最悪を記録。線路への突き落としなど凶悪化が目立つ。アジア系住民の多い西部でも、人種差別に基づくヘイトクライム(憎悪犯罪)の急増が際立っている。

18日、ニューヨークの地下鉄駅ホームから突き落とされて死亡したアジア系女性の追悼集会で演説するアダムズ市長(中)=AP

◆地下鉄での暴力事件が高水準

 ニューヨーク市警によると、市内の地下鉄で昨年発生した暴力事件は、それぞれ8件の殺人と性的暴行を含む461件で、前年から100件増加。1997年以来の高水準となった。
 年が明けた今月15日には女性(40)が繁華街タイムズスクエア駅のホームでホームレスの男(61)に突然突き飛ばされ転落。進入してきた電車にひかれて死亡した。23日にも別の駅で男性(62)が線路に落とされ負傷した。女性を襲ったホームレスは精神面に問題を抱えていたとされる。
 アダムズ市長は「市民は地下鉄を安全だと感じていない」と指摘。犯罪の多発には、コロナ禍での困窮やストレス増加が背景にあるとされ、ニューヨーク州のホークル知事は職員やボランティア20人を地下鉄構内に配置し、ホームレスを医療やシェルターにつなぐ計画を公表した。

◆根強いアジア系住民への偏見

 一方、西部カリフォルニア州サンフランシスコでは、昨年のアジア系住民へのヘイトクライムが前年の9件から暫定値で60件へと急増した。黒人やイスラム系のヘイト被害はほぼ横ばいの中、新型コロナを「中国ウイルス」と呼んだトランプ前大統領の発言などに影響されたアジア系への偏見が根強いことがうかがわれる。
 地元メディアによると、アジア系の店を狙った破壊や略奪、アジア系女性への強盗や暴力などが多い。ブリード市長は25日「アジア系高齢者への付き添いプログラムや巡回の強化などを進めてきたが、もっと多くのことをしなければならない」と表明した。
 調査機関ピュー・リサーチ・センターの昨年の調査によると、アジア系住民の81%が自分たちへの暴力が増えていると感じており、他の米国人の56%を大きく上回っている。

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