バイデン大統領「近く東ヨーロッパに米軍派遣」 ロシアのウクライナ侵攻を懸念 

2022年1月29日 18時29分

バイデン米大統領=AP

 【ワシントン=吉田通夫】ロシアがウクライナ周辺に10万人規模の軍部隊を集結させている問題で、バイデン米大統領は28日、報道陣に「近いうちに北大西洋条約機構(NATO)と東欧に軍部隊を派遣する」と語った。オースティン国防長官と米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長もそろって記者会見し、侵攻を懸念。軍事衝突など、最悪の事態に備えた動きが加速している。
 米国は後方支援や医療、偵察など8500人の在米部隊に欧州派遣に備えた待機命令を24日に発令。NATOが約4万人の即応部隊を立ち上げた場合に加勢する。ただバイデン氏は派遣する人数について「それほど多くはない」とも付け加えた。

◆EUには天然ガスの安定調達で協力

 バイデン氏は同日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と、欧州各国が天然ガスを安定して調達できるよう協力するとの共同声明も発表。EUは天然ガスの4割強をロシアからの輸入に依存しており、ロシアが侵攻に伴って供給を停止するリスクに備えて調達先を多角化する。
 声明では「世界中のさまざまな供給源から、EUに向けて継続して十分に、適切に供給するため、共同で取り組む」と説明。EUに加盟していないウクライナのエネルギー確保にも努め、「ウクライナをEUのガス・電力市場に徐々に統合する」とした。
 2月7日に開かれる米EU間がエネルギーについて話し合う会合で具体策を議論する。

◆ウクライナ大統領は「パニックになる必要はない」

 一方、オースティン国防長官は会見で、10万人のロシア軍は「複数の都市や重要な奪取可能な」規模だと説明。「外交の余地は残されている」としつつ、ロシア側が侵攻の口実をつくるための虚偽情報を発信していると警戒感を示した。

28日、ウクライナ東部ルガンスク州で、装甲車に乗るウクライナ軍兵士ら=AP

 同席したミリー氏は、集結しているロシア軍について「これほどの規模を見るには、冷戦時代にさかのぼらなければならない」と危機感を表明。「ウクライナには人口密集地があり、もし戦争が勃発すれば、民間人への被害は計り知れない」と語った。
 一方、ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、海外メディアとの記者会見で「われわれはパニックになる必要はない」と語ったという。国民に平静を呼び掛けており、侵攻を想定した言動を強める欧米との温度差が浮き彫りになっている。

◆ロシアはNATO不拡大要求に対する米回答に不満

ロシアのプーチン大統領=AP

 ロシアのプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領と電話で会談し、ロシアによる北大西洋条約機構(NATO)の不拡大要求に、米国とNATOが書面で伝えた回答について、「鍵となる問題が無視された」と不満を表明した。
 ロシア大統領府によるとプーチン氏はロシア周辺でのNATOの兵器配備への懸念を改めて表明し、「米国などの軍備がロシアの安全保障を脅かしている」と主張。ウクライナ東部での紛争については、ウクライナとロシアに仏独を加えた4カ国での合意に基づき、自治権に当たる「特別な地位」を親ロ派に与える重要性を強調した。
 一方で、仏大統領府によると、両氏は緊張の緩和と対話の継続の必要性で一致した。
 マクロン氏は続いてウクライナのゼレンスキー大統領とも電話会談。仏大統領府によると、両氏はノルマンディー形式での対話を通じて緊張緩和への努力を続けることで一致した。
 仏メディアは、マクロン氏には欧州連合(EU)議長国の立場を生かし、米ロ間を中心に動くウクライナ情勢へ欧州の関与を強める狙いがあると報じている。(キシニョフ=小柳悠志、パリ=谷悠己)

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