岸谷 香《東京 MY STORY》「私が誰だかわかりますか!?」(千代田区/市ケ谷・前編)

2022年2月9日 09時55分

ミュージシャンの岸谷香さんが、東京の街と体験を重ねて綴ります。人生の大半を東京で過ごしてきた岸谷香さんが、それぞれの時代の東京の街模様を、自らの体験や大切な思い出と重ねて書き綴るエッセーです。リアルだからこその共感あふれる連載です。

第9回 千代田区/市ケ谷(前編)「私が誰だかわかりますか!?」

 2013年の冬に東京で大雪が降った日がありました。皆さん覚えていらっしゃいますか!?
あの年私は、2012年の大晦日を人生初の紅白歌合戦で過ごし、そこでプリンセス プリンセスの再結成の活動も終了だったので、関係スタッフが一堂に会してお疲れ様会があり、年も明けて元日の朝方、疲れきって帰宅しました。一気に現実に戻り、寝不足の目をこすりながらお正月をこなして、恒例の健康診断ウィークも終わった頃の大雪の日だったと思います。
あの日は、午前中から闘病中だった私の従兄弟のお見舞いに、新宿あたりの病院にマイカーを運転して行っていました。丁度、娘(当時小3ぐらいだったかなぁ)を友人のお誕生日会に送り、私は一人で病院へ行きました。ほんの1時間程病室にいる間に、雪は深々と降り続けて、あっという間に病室の窓からの景色も、東京ではないような真っ白な世界になっていきました。「ちょっとこりゃヤバいかもだしスタッドレスも履いてないから、もう帰るね、またすぐ顔見に来るからね、ごめんね」と早々に病室を後にしたつもりでしたが、地下の駐車場から地上に出るスロープでは、すでに車の列ができていました。
守衛のオジサンが一台一台親切に「スロープの途中でアクセル放しちゃダメだよ、一気に上りきらないと滑って下っちゃうからね。一気に行くんだよ」と説明してくれて、私の番に。ブーンとアクセルを踏み込みましたが、タイヤが滑ってる様子も感じて、ちょっと怯んで思わずアクセルを弱めてしまうと、すかさず「ダメだよー。もっと踏み込んで! 絶対アクセル放しちゃダメー。踏み込んで!!踏み込んで!!」と叫び声がして、もう必死にアクセルを踏むと、キュルキュルと滑りながらも、なんとかスロープを上りきる事が出来ました。「よーしそのまま行けー!」と守衛のオジサンが後ろでまた叫びながら手で行けー行けーと合図している…。なんかメチャ共同作業を成し遂げた気持ちでいっぱいで、そのまま大通りまで出ました。とてもいい守衛さんでした。
 大通りに出ると、今度は大渋滞が待っていました。あー混んでるなー…と思いながらもどうする事もできないのでそのままトロトロ進んでいると、今度はあっちこっちでスリップしてる車が…(汗)。多分信号などで行っちゃえー!ってスピード出した車やブレーキ踏んだ車が雪で滑ってスリップしちゃったんでしょう。もう変なとこ向いて停まっている車続出で…。
これは本格的に危ない…と不安になり、一体どうするべきか、悩みましたがその辺に車を乗り捨てる訳にもいかないし…でもこのまま走ったら、いつか必ずスリップするか、スリップした車にぶつけられる事は目に見えている…うーーーっっ。どうしたらいいんだ…(涙)。とその時、私の目に大きなSONYの文字が飛び込んできました。市ケ谷の駅近くにソニーミュージックのビルがあったのです。何を隠そう、私は10代の終わりからずっとソニーの専属契約アーティスト!! つまり、自分のレーベル社屋が偶然にも目の前に現れた訳で、こりゃラッキーと言わんばかりにスルスルと駐車場に入り、しかし、冷静に考えたら、何の申請もしていないのに、いきなり駐車させてもらえるのか…!? でも、スタッフを探して手続きをしてもらってる場合でもない…困った私はイチかバチか、『さっきの病院の守衛さんぐらい良い人でありますように!』と祈りながら、SONYの駐車場に居た守衛さんに声をかけました。
「あの〜、突然ですが私が誰だかおわかりになりますか!?」と。マスクを外し(コロナ禍ではありませんでしたが、歌手なので喉の乾燥防止と風邪などの感染予防に日常的にマスクを利用していました!)なるべくきちんと顔を見せて、守衛さんに最大の笑顔で。すっぴんだったことを激しく後悔しましたけどね(笑)。追加情報を「えーっと…紅白にも先日出たんですけど…ここの専属アーティストで…プリンセス プリンセスってご存知で!?」すると、「あー!!!わかる、わかりますよ!プリプリね!」と守衛さん!!『ヤッター!』「そうです。私、プリプリのボーカルなんです。岸谷香っていうものなんですけどね!」
さて、ここからどうやって駐車のお許しを得るか…。「あの〜この急な雪でホントに困ってしまって道路はあちこちで車がスリップしてるし、私の車スタッドレスも履いてないんで、本当に危ないんですよ。ここで事故とかして、ケガでもしたら、SONYさん的にもめんどくさい事になっちゃうと思うんですよね…なんで、何の申請もしてないんですけれど、今ここに車を駐車させてもらって、私、電車かタクシーかに乗ろうと思うんです。その方が安全だと思うので。そう思いませんか!?」すると人の良さそうな守衛さんは「いやいやこりゃ危ないからね。電車かタクシーの方が安心ですよ」…『ヤッター!!』「じゃすみません、雪が落ちついたら、すぐ車取りに来ますんで、どこに停めたら良いですか?」「じゃこの辺にどこでも停めてください」と!
許可を得て、車を停めて、アーティスト担当のスタッフの名前やら部署を告げて「ありがとうございましたー!」とお礼を言うと、守衛さんは「車は落ち着いてからで、いつでも良いから!気をつけて!!」とニコニコ顔で私を送り出してくれました!! なんという幸運!!なんと話の解る守衛さん!! 心から感謝し、車を乗り捨てて駅へと向かったのでした。
さて、果たしてその後私はすんなり帰宅できたのか…後編もどうぞお楽しみに!

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次回更新は、2022年2月23日(水)更新予定です。
お楽しみに。
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岸谷 香
1996年5月31日、武道館公演をもってプリンセス プリンセスを解散。
1996年結婚。翌年、奥居香ソロとしてシングル「ハッピーマン」を発売し、ソロ活動をスタート。
2001年子供を授かったことをきっかけに岸谷香に改名。その後13年間は育児を中心とする生活が続いた。2012年、東日本大震災復興支援の為、16年振りにプリンセス プリンセスを一年限定で再結成。
2014年より、ソロ活動を本格的にスタートさせ、数々のライブ活動を実施。
ガールズバンドプロジェクトを立ち上げ、ミニアルバム「Unlock the girls」をリリースしたり、豊洲PITにて、東日本大震災復興支援ライブを行ったりもした。
2021年2月にはミニアルバム「Unlock the girls3-STAY BLUE」を発売。
2021年7月からは「KAORI PARADISE 2021」ひとり弾き語りツアーをスタートした。
お知らせ
レギュラー
・ラジオNHK-FM「岸谷香Unlock the heart」
毎週金曜23:00〜スタート
・ニッポン放送「オールナイトニッポンMUSIC10」
毎月第四水曜日22:00~スタート
LIVE情報
【岸谷香 感謝祭2022】
2022年2月13日(日) 神奈川・KT Zepp Yokohama  
開場16:45 / 開演17:30
[ゲスト]根本 要(スターダスト☆レビュー) / 和田 唱(TRICERATOPS)
チケット料金:全席指定 9,000円(税込・入場時ドリンク代別途必要)
チケット一般発売中!
生配信決定!
配信視聴券:4,000円(税込)
PIA LIVE STREAMにて2月19日までアーカイブ配信あり。
詳細は下記よりご確認ください。
https://w.pia.jp/t/kaorikishitani-pls/ 

【Kaori Kishitani 2022 Live Tour 55th SHOUT!】
5月21日(土) 愛知・名古屋ボトムライン  開場 17:30 / 開演 18:00
5月22日(日) 大阪BIGCAT    開場 16:45 / 開演 17:30
5月28日(土) 宮城・仙台Rensa   開場 16:30 / 開演 17:00
5月29日(日) 東京EX THEATER ROPPONGI 開場 16:45 / 開演 17:30
6月4日(土)  沖縄ライブハウスモッズ  開場 17:30 / 開演 18:00
チケット料金:全席指定 7,700円(税込・入場時ドリンク代別途必要)
※沖縄公演のみオールスタンディング、整理番号順入場
※3歳以上チケット必要
<一般発売>2022年2月26日(土)10:00~

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