「マイナンバー」中間サーバー 稼働後に契約変更、23回は自治体要望 検証不足で事業費膨張

2022年1月31日 06時00分
 相次ぐ契約変更で費用が膨張したマイナンバー事業で、関連システムの整備・運用で繰り返された29回の変更のうち、23回は利用する自治体からの要望によるものだったことが分かった。複数の自治体担当者は「事前テストが不十分だった」と証言。システム稼働前の検証不足が、運用開始後の変更多発を招いた可能性があり、事業費を増大させた。(デジタル政策取材班)
 本紙が、国のマイナンバー政策を担う地方公共団体情報システム機構から資料提供を受け分析した。
 契約変更を重ねたシステムは、全国の自治体とマイナンバーの中枢システムをつなぐ「中間サーバー」。マイナンバーの情報連携で要となる機器で、行政手続きに必要な情報を役所間でやりとりする際のセキュリティーを強化する。機構はサーバーのハードウエアの運用・保守をNECなどに発注した。

◆改善要望200件超える

 2017年7月から中間サーバーが稼働し情報連携が始まると、システム改善を求める声が各自治体から相次いだ。機構によると、要望は200件を超えた。このうち「DV被害者の個人情報をより確実に保護する設定にしてほしい」「端末操作中のエラーメッセージを分かりやすくして」など84件の要望に応じた。改修のために、機構は23回の契約変更を行った。

◆国「使って初めて分かることも」

 中間サーバーの稼働前には、国主導で、全国の自治体が参加したテストも実施していた。神奈川県内の自治体担当者は「近隣の自治体と情報を送ったり受け取ったりする簡単なもので、窓口の職員が手順を確認する研修のつもりだった。とてもシステムの機能をチェックできるようなテストではなかった」と明かす。
 機構は「初めての取り組みで、使ってみて初めて分かることもある」と説明する。国のマイナンバー事業の司令塔機能が移管されたデジタル庁は「システム運用にも基本的に支障はなく、安定的に稼働していることから十分なテストが行われたと認識している」とコメントした。

◆事業費1.6倍の335億円に

 機構によると、中間サーバーの整備・運用業務では、29回の契約変更を重ねた結果、20年度末時点で、サーバーの使用延長などで事業費は200億円から335億円に膨らんだ。そのうち、自治体の要望を受けたシステム改修や法改正に伴う対応で増額した分は、30億円程度と説明している。

 情報連携 国や自治体など行政機関がバラバラに管理する個人情報をネットワークを通じて相互利用できるようにすること。国が整備する中枢システムを核に各行政機関のシステムをつなげた専用ネットワーク上で行う。各役所は中枢システムに接続する際、中間サーバーを介し、個人情報は符号と呼ばれる代替データに変換され情報漏えいリスクに備える。自治体間の情報連携は2017年7月に始める予定だったが、4カ月の試行期間を設け、本格運用の開始は11月に遅れた。

 マイナンバー事業の契約変更 地方公共団体情報システム機構が2014~16年度に発注した78件のうち、半数弱の37件で契約変更が行われ、事業費が当初契約額から2.6倍の1655億円超に膨張していた。4回以上変更を繰り返していた案件は15件あり、最多は自治体中間サーバーのハードウエアの整備・運用の29回だった。ITの公共調達に詳しい識者によると、契約変更の回数や増額規模は異例。

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